
森に隠された金の冠は、わずか二日。
金冠樹は、高さ25mに達する常緑林の高木。なめらかな淡灰色の幹を持ち、ふだんは緑の樹冠の海にまぎれて見分けがつかない。乾季のはじめ、尾根から最初の冷気が下りてくると、その冷気にふれた株から順に、この木は変貌する。七日かけて葉をすべて落とし、裸になった枝いっぱいに、金色のラッパ型の花だけを密に開くのだ。樹冠まるごとが金の冠になる時間は、わずか二日。二日が過ぎると花はいっせいに散り、根もとに金の花びらの円盤だけを残して、木はまた静かな緑へ戻りはじめる。そして冷気が斜面を下った道すじのとおりに、翌々日には次の株が金になる。森じゅうが一度に咲かないのは、理にかなっている。ただ一本だけが輝けば、谷じゅうの送粉者をその二日間、独り占めできるからだ。だから乾季のはじめのひと月、緑の海のどこかには必ず一つだけ金の冠が灯っていて、それは冷気の通り道を描きながら、尾根から谷へゆっくり渡っていく。
PLATE I
PLATE II
PLATE III
PLATE IV
PLATE V
PLATE VI
PLATE VII
PLATE VIII
一本の木が金の冠をかぶれるのは、二日だけ。
森を渡る冷気が、順番にその木へ届くからです。
ブラジル南東部、大西洋岸森林の尾根。
乾季のはじめ、最初の冷気にふれた木は、七日で葉をすべて落とします。
そして裸の枝いっぱいに、金色の花だけを開きます。
緑の樹冠の海に、金の冠がひとつだけ灯ります。