
枯れた茎に、氷点下の朝だけ花が咲きます。
氷筍花は、夏に小さな花を咲かせたあと晩秋に枯れて立ち枯れる、高さ二十センチほどの草。見た目は褐色の地味な枯れ茎で、花はもう残っていない。けれど根はまだ生きていて、凍っていない地中から水を吸い上げ続ける。土はまだ凍らず、空気だけが氷点下へ下がる無風の明け方、吸い上げられた水は枯れ茎の根元にできた細かな縦の裂け目から押し出される。外気に触れた瞬間に凍り、薄いリボン状の氷となって巻き出す。次々と押し出される水が古い氷を外へ押しやり、リボンは幾重にも層をなして、白い花のように広がっていく。主役は植物そのものではなく、根元から押し出された氷の帯だ。だが日が昇って気温が上がると、氷の花はみるみる溶け、跡形もなく消えてしまう。咲いているのは、夜明けの数時間だけである。
PLATE I
PLATE II
PLATE III
PLATE IV
PLATE V
PLATE VI
PLATE VII
PLATE VIII
枯れた茎に、氷点下の朝だけ花が咲きます。
それは、茎の中の水が割れ目からしみ出して凍るからです。
晩秋の山あい、霜が深くたまる無風の窪地。
地面はまだ凍らず、空気だけが氷点下へ落ちる明け方。
根が吸い上げた水が枯れ茎の裂け目からにじみ出し、触れた瞬間に薄いリボンとなって巻き出します。
幾重にも押し出された氷の帯は、白い花のように広がります。