
百日以上眠った種だけが咲きます。
残雪草は、高さ5cmほどの小さな多年草。銀白色の細かな綿毛に包まれた葉を密に重ね、その上に直径1cmに満たない純白の小花を無数に敷き詰めて、低くなめらかな白いかたまりをつくる。この草の種子は、雪の下で百日以上冷やされないと目を覚まさない。だから株が育つのは、冬に深い吹き溜まりができた場所だけ。夏、緑に覆われた山肌のなかで、残雪草の群れは去年の吹き溜まりの形をそのままなぞって咲き、遠目には解け残った雪田と見分けがつかない。八月の尾根で「残雪」と記録された白い斑が、近づくと一面の花だったという報告が、この山では繰り返されてきた。風が雪を運ぶ場所は毎年ほとんど変わらないから、白い斑の形も毎年ほとんど変わらない。そして秋、本当の初雪が花の上に積もると、どこまでが雪でどこからが花なのか、白の境目は静かに消える。雪に埋もれた花はそのまま眠りにつき、山は次の吹き溜まりを積みはじめる。

PLATE I
PLATE II
PLATE III
PLATE IV
PLATE V
PLATE VI
PLATE VII
PLATE VIII
真夏なのに、この残雪だけは解けません。
雪ではなく、花だからです。
コーカサス山脈、夏の亜高山帯の草原。
この草の種子は、雪の下で百日冷やされないと目を覚ましません。
だから育つのは、冬に深い吹き溜まりができた場所だけ。
夏になると、去年の吹き溜まりの形のとおりに、純白の花が敷き詰められます。