Archive of Vanished Flora
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見返り紅 Retroflora unisolis
Specimen · N°085 · 土

Retroflora unisolis

振り返った時だけ、この谷は真紅になります。

FOUND 43.0°N 77.5°E · カザフスタン南東部、天山山脈北麓の丘陵草原  ·  ✝ EX · 最終確認 2015 年

見返り紅は、高さ18cmほどの野生のチューリップ。細い溝状の灰緑色の葉を二枚だけ持ち、茎の先に椀型の花をひとつ開く。花びらの内側は深い緋色で、付け根に暗いワイン色の斑が沈む。外側は細かな粉を帯びた銀灰色。この花の不思議は、向きにある。椀型の花は皿型アンテナのように日光を花芯に集め、花の中心をまわりの空気より数度暖かく保つ。暖かい花芯は花粉を早く熟させ、冷えた朝の虫たちを暖める。だから花は開いた朝から茎ごと太陽を正確に追いつづけ、谷に散らばる何十万の株が、一株の狂いもなく同じ角度で揃う。その結果、太陽へ向かって歩く者には銀灰色の粉をまとった花の背中しか見えず、谷はただの色のない草原にしか見えない。ところが太陽を背にして振り返った瞬間、すべての花の緋色の内側が一斉にこちらを向き、見渡すかぎりの草原が真紅に反転する。花の期間は春のたった五日。五日が過ぎると花びらは散り、谷は本当にただの草原へ戻る。

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肖像

標本写真 / archival still
見返り紅
STILL · 標本写真

「振り向きの緋」

この標本に動く記録は残されていません。静止した一枚に、その姿をとどめています。

ARCHIVAL STILLPLATESILENT
Narration · ナレーション音声
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標本図版

8 枚 · ホバーで拡大
見返り紅 plate 1PLATE I
見返り紅 plate 2PLATE II
見返り紅 plate 3PLATE III
見返り紅 plate 4PLATE IV
見返り紅 plate 5PLATE V
見返り紅 plate 6PLATE VI
見返り紅 plate 7PLATE VII
見返り紅 plate 8PLATE VIII
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観察ノート

Habitat · 発見地
カザフスタン南東部、天山山脈北麓の丘陵草原。雪解け水が地中に残る春のわずかな期間だけ湿る、緩やかな起伏の乾燥ステップにだけ現れる。
Local name · 現地での呼び名
振り向きの緋
Folklore · 現地伝承
現地では、谷を発つ者は出口で一度だけ振り返る習わしがあり、そのとき谷が緋色に染まって見えた者は無事に戻ってこられると語り継がれてきた。緋が薄い年は雪が早いともいう。
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発見地

Coordinates
43.0°N 77.5°E
カザフスタン南東部、天山山脈北麓の丘陵草原
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記録

振り返った時だけ、この谷は真紅になります。

花がすべて、寸分違わず太陽だけを向いているからです。

天山山脈の麓、カザフスタン南東部の草原。

椀型の花は日光を集める皿になり、花の中心はまわりより数度暖かい。

だから花は朝から茎ごと太陽を追い、谷じゅうの何十万株が同じ角度で揃います。

花びらの外側は銀灰色。太陽へ向かって歩くかぎり、ここはただの色のない草原です。

More分類・学名・語源などの詳しい標本データ
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分類

分類・標本データ
Scientific name · 学名
Retroflora unisolis  K. Brandt, 2008
Taxonomy · 分類
植物界 › 被子植物門 › 双子葉植物綱 › RetrofloralesRetrofloraceaeRetroflora › unisolis
Voucher · 標本
AVF-085 · Holotype
Archive of Vanished Flora (AVF)
Conservation · 保全状況
✝ EX — 絶滅 最終確認 2015 年
Collector · 採集
Y. Aoki
2007-02-02
Synonym · 異名
Retroopsis unisolis C. Iwabuchi, 2005
Protologue · 原記載(ラテン)
Planta humilis, caule brevissimo, petalis albidis nitentibus, in loco aperto crescens. Typus: カザフスタン南東部、天山山脈北麓の丘陵草原. Species iam extincta.
Discovered / Described
2007 / 2008
草丈 Height
18cm
生活形 Life form
多年草
葉序 Phyllotaxy
互生
染色体数 Chromosome
2n = 16
開花期 Flowering
撹乱(噴火・野火)の翌季
送粉 Pollination
小型の双翅目・膜翅目
基質・pH Substrate
礫質・ほぼ中性
標高 Elevation
200〜1,200 m
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語源

学名の語源
Retroflora属名 / GENUS
flor
unisolis種小名 / EPITHET
語源は記録に残っていない
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