Archive of Vanished Flora
標本を呼び出しています…
翡翠簾 Smaragdocatena penduliflora
Specimen · N°083 · 霧

Smaragdocatena penduliflora

摘んだ瞬間に、その翡翠色だけが消えます。

FOUND 6.0°N 116.6°E · 東南アジアの島嶼部、年じゅう霧に濡れる深い渓谷の斜面林  ·  ✝ EX · 最終確認 1987 年

翡翠簾は、湿った渓谷林の木々に蔓を這わせるつる性植物。枝から長い花房を垂らし、爪のような形の小花がひと房に鈴なりに並んで、長いものでは三メートルもの簾となって滝のように垂れ下がる。花の色は青とも緑ともつかない翡翠色だが、これは一種類の色素の色ではない。花びらの細胞の中で、青い色素と、それ自体は無色の助色素とが、弱酸性の細胞液の中でぴたりと重なり合ったときにだけ、あの翡翠色は立ちあらわれる。谷底は年じゅう霧に濡れ、直射日光が届かない。この薄暗さと湿りが、色の重なりを保っている。ところが房を切り取ったり強い光に当てたりすると、細胞液の均衡が崩れて重なりがほどけ、翡翠色は数時間のうちに灰色へと抜けていく。だから、この色を谷の外へ持ち出すことはできない。

01

肖像

標本写真 / archival still
翡翠簾
STILL · 標本写真

「谷の簾(たにのすだれ)」

この標本に動く記録は残されていません。静止した一枚に、その姿をとどめています。

ARCHIVAL STILLPLATESILENT
Narration · ナレーション音声
0:00 / --:--
02

標本図版

8 枚 · ホバーで拡大
翡翠簾 plate 1PLATE I
翡翠簾 plate 2PLATE II
翡翠簾 plate 3PLATE III
翡翠簾 plate 4PLATE IV
翡翠簾 plate 5PLATE V
翡翠簾 plate 6PLATE VI
翡翠簾 plate 7PLATE VII
翡翠簾 plate 8PLATE VIII
03

観察ノート

Habitat · 発見地
東南アジアの島嶼部、年じゅう霧に濡れる深い渓谷の斜面林。標高約800mの、直射日光が届かない谷底近くの湿った木々に蔓を垂らす。
Local name · 現地での呼び名
谷の簾(たにのすだれ)
Folklore · 現地伝承
谷の民は、霧がもっとも深くなる頃にこの翡翠の簾が谷を垂れると伝える。見るのはよいが持ち帰ってはならない、色は谷のものであり、谷の口を出た花は灰になる——そう語り継がれ、房を摘む者はいないという。
04

発見地

Coordinates
6.0°N 116.6°E
東南アジアの島嶼部、年じゅう霧に濡れる深い渓谷の斜面林
05

記録

摘んだ瞬間に、その翡翠色だけが消えます。

この青緑は、二つの色素が細胞の中でぴたりと重なったときにだけ生まれる色だからです。

東南アジアの島、年じゅう霧に濡れる深い谷。

木々に垂れる蔓から、爪の形をした小花が鈴なりに連なり、長いものは三メートルもの翡翠の簾になります。

谷底は薄暗く湿っていて、その薄暗さだけが、あの青緑の重なりを保ちます。

けれど房を切り、明るい場所へ運ぶと、色の均衡はほどけ、翡翠色は数時間で灰色に抜けていきます。

More分類・学名・語源などの詳しい標本データ
06

分類

分類・標本データ
Scientific name · 学名
Smaragdocatena penduliflora  Y. Aoki, 1984
Taxonomy · 分類
植物界 › 被子植物門 › 双子葉植物綱 › SmaragdocatenalesSmaragdocatenaceaeSmaragdocatena › penduliflora
Voucher · 標本
AVF-083 · Holotype
Archive of Vanished Flora (AVF)
Conservation · 保全状況
✝ EX — 絶滅 最終確認 1987 年
Collector · 採集
N. Drei
1981-12-15
Synonym · 異名
Smaragdocatenopsis penduliflora T. Okabe, 1979
Protologue · 原記載(ラテン)
Herba perennis, rhizomate tenui, foliis linearibus, inflorescentia pauciflora. Typus: 東南アジアの島嶼部、年じゅう霧に濡れる深い渓谷の斜面林. Species iam extincta.
Discovered / Described
1981 / 1984
草丈 Height
5〜15 cm
生活形 Life form
低木〜小高木
葉序 Phyllotaxy
互生
染色体数 Chromosome
2n = 36
開花期 Flowering
撹乱(噴火・野火)の翌季
送粉 Pollination
風媒
基質・pH Substrate
礫質・ほぼ中性
標高 Elevation
200〜1,200 m
07

語源

学名の語源
Smaragdocatena属名 / GENUS
語源は記録に残っていない
penduliflora種小名 / EPITHET
flor
08

関連標本

同じ環境の標本
⟵ 標本世界地図
EN