
摘んだ瞬間に、その翡翠色だけが消えます。
翡翠簾は、湿った渓谷林の木々に蔓を這わせるつる性植物。枝から長い花房を垂らし、爪のような形の小花がひと房に鈴なりに並んで、長いものでは三メートルもの簾となって滝のように垂れ下がる。花の色は青とも緑ともつかない翡翠色だが、これは一種類の色素の色ではない。花びらの細胞の中で、青い色素と、それ自体は無色の助色素とが、弱酸性の細胞液の中でぴたりと重なり合ったときにだけ、あの翡翠色は立ちあらわれる。谷底は年じゅう霧に濡れ、直射日光が届かない。この薄暗さと湿りが、色の重なりを保っている。ところが房を切り取ったり強い光に当てたりすると、細胞液の均衡が崩れて重なりがほどけ、翡翠色は数時間のうちに灰色へと抜けていく。だから、この色を谷の外へ持ち出すことはできない。

PLATE I
PLATE II
PLATE III
PLATE IV
PLATE V
PLATE VI
PLATE VII
PLATE VIII
摘んだ瞬間に、その翡翠色だけが消えます。
この青緑は、二つの色素が細胞の中でぴたりと重なったときにだけ生まれる色だからです。
東南アジアの島、年じゅう霧に濡れる深い谷。
木々に垂れる蔓から、爪の形をした小花が鈴なりに連なり、長いものは三メートルもの翡翠の簾になります。
谷底は薄暗く湿っていて、その薄暗さだけが、あの青緑の重なりを保ちます。
けれど房を切り、明るい場所へ運ぶと、色の均衡はほどけ、翡翠色は数時間で灰色に抜けていきます。