
雨のあいだだけ、この花は透きとおります。
雨透草は、山あいの湿った落葉樹林の薄暗い林床に生える多年草。丈は三十から四十センチほどで、幅広く浅く裂けた濃緑の葉を広げ、細い花茎の先に白い小さな椀形の花をいくつか咲かせる。晴れた日、花弁はふつうの白い花にしか見えない。ところが雨が降り、花弁が濡れると姿が変わる。花弁の細胞のすきまを満たしていた空気が雨水に置きかわり、光を散らしていた無数の境目が消えるため、白は失われ、花弁は硝子のように透きとおる。透けた花弁ごしには、葉脈も、雨粒も、向こうの薄暗い森まで見える。色素で白いのではなく、微細な構造が光を散らして白く見えていただけなので、水が抜けて乾くと空気がもどり、花はふたたび白い姿に返る。だから透明な花が見られるのは、雨のあいだだけ。乾いた標本には、透けた性質はもう残らない。

PLATE I
PLATE II
PLATE III
PLATE IV
PLATE V
PLATE VI
PLATE VII
PLATE VIII
雨のあいだだけ、この花は透きとおります。
濡れると白い色が消え、向こうの森まで透けて見えるからです。
日本の山あい、霧の多い沢沿いの、薄暗い落葉樹の林床。
雨が花弁にしみこむと、細胞のすきまの空気が水に置きかわり、光の散乱が消えます。
色を失った花弁は硝子のように透きとおり、葉脈も、雨粒も、そのまま見えます。
けれど雨がやんで乾くと、空気がもどり、花はまた白い姿に返ります。