Archive of Vanished Flora
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盾角羊歯 Clypeoceras indicans
Specimen · N°070 · 霧

Clypeoceras indicans

このシダは、土のない幹の上でしか生きられません。

FOUND 5.9°N 116.4°E · ボルネオ島の山地雲霧林  ·  ✝ EX · 最終確認 2019 年

盾角羊歯は、苔むした大木の幹に貼りつく着生シダ。株の基部には円い盾状の葉(貯水葉・盾葉)が幹に密着して重なり、その上に鹿の角のように枝分かれした細長い葉(胞子葉・角葉)が突き出す。盾葉は上向きに反った縁で、落ち葉・樹皮くず・雨水を受け止め、幹との隙間に溜め込む。溜まった有機物は微生物と根に分解され、自前の腐植ポケット、つまり養分の貯蔵庫になる。角葉は光と幹を流れ落ちる雨水を求めて伸びるため、水と養分の多い側へ角の向きが傾く。だから角が指す先の根元には、いちばん厚い腐植が溜まっている。着生ゆえに土を持たない代わりに、落ちてくるものを集めて自分の土をつくる。乾季に幹が乾いても、盾葉の内側の腐植は湿りを抱えたまま、株を静かに支えつづける。

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肖像

標本写真 / archival still
盾角羊歯
STILL · 標本写真

「森の道しるべ」

この標本に動く記録は残されていません。静止した一枚に、その姿をとどめています。

ARCHIVAL STILLPLATESILENT
Narration · ナレーション音声
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標本図版

8 枚 · ホバーで拡大
盾角羊歯 plate 1PLATE I
盾角羊歯 plate 2PLATE II
盾角羊歯 plate 3PLATE III
盾角羊歯 plate 4PLATE IV
盾角羊歯 plate 5PLATE V
盾角羊歯 plate 6PLATE VI
盾角羊歯 plate 7PLATE VII
盾角羊歯 plate 8PLATE VIII
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観察ノート

Habitat · 発見地
ボルネオ島の山地雲霧林。標高千二百メートルほどの湿った尾根で、苔むした大木の幹に貼りつく。一年じゅう霧に濡れる薄暗い樹幹の、樹皮の割れ目に沿ってだけ根を張る。
Local name · 現地での呼び名
森の道しるべ
Folklore · 現地伝承
現地では、盾角羊歯の角が指す方向の根元を掘るといちばん肥えた黒い土が出るとされ、焼畑の畑地を選ぶときはまずこの角の向きを読んだ、と語り継がれてきた。
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発見地

Coordinates
5.9°N 116.4°E
ボルネオ島の山地雲霧林
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記録

このシダは、土のない幹の上でしか生きられません。

それでも枯れないのは、落ちてくるものを集めて自分の土をつくるからです。

株の根元では、円い盾のような葉が幹に貼りつき、落ち葉と雨を受け止めます。

受けた落ち葉はゆっくり腐り、幹との隙間に自前の腐植ポケットが育ちます。

そして鹿の角のような葉は、水と養分の多い側へ向かって伸びていきます。

だから角が指す先の根元に、いちばん厚い腐植が眠っています。

More分類・学名・語源などの詳しい標本データ
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分類

分類・標本データ
Scientific name · 学名
Clypeoceras indicans  H. Voss, 2012
Taxonomy · 分類
植物界 › 被子植物門 › 双子葉植物綱 › ClypeocerasalesClypeocerasaceaeClypeoceras › indicans
Voucher · 標本
AVF-070 · Holotype
Archive of Vanished Flora (AVF)
Conservation · 保全状況
✝ EX — 絶滅 最終確認 2019 年
Collector · 採集
T. Okabe
2010-11-05
Synonym · 異名
Clypeocerasopsis indicans Y. Aoki, 2008
Protologue · 原記載(ラテン)
Suffrutex nanus, foliis imbricatis, floribus solitariis nocte apertis. Typus: ボルネオ島の山地雲霧林. Species iam extincta.
Discovered / Described
2010 / 2012
草丈 Height
5〜15 cm
生活形 Life form
低木〜小高木
葉序 Phyllotaxy
互生
染色体数 Chromosome
2n = 34
開花期 Flowering
短い開花期(数日)
送粉 Pollination
風媒
基質・pH Substrate
礫質・ほぼ中性
標高 Elevation
2,000〜2,800 m
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語源

学名の語源
Clypeoceras属名 / GENUS
語源は記録に残っていない
indicans種小名 / EPITHET
語源は記録に残っていない
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関連標本

同じ環境の標本

観察記録の追補

再訪と追記
2026-06-24 · 雨後の花と短い送粉

乾季末の最初の強い雨の翌朝、数株だけが淡い花を開いていた。花冠は昼前にしぼみ、葯はすでに柱頭に触れている。自家受粉を基本にする形だが、湿った砂面を歩く小型のハエが花口をなめ、隣株へ移るのを見た。送粉は盛大な事件でなく、雨後の数時間に起こる小さな保険である。

2026-06-24 · 群生斑の成り立ち

痩躯草は林床に一様には出ない。浅い窪地、倒木の陰、白砂の表面を雨水が薄く走る筋に沿って、十数本が疎らに並ぶ。果実後の細かな種子は風で遠くへ飛ぶほど軽くなく、濡れた砂の上を水膜に押されて数メートル動くらしい。群生は繁殖力の強さではなく、白砂の微地形に種子が止められた跡である。

2026-06-24 · 記録から漏れる理由

花のない時期の痩躯草は、白砂をかぶった灰緑の針にすぎず、採集者の目には若いカヤツリグサか折れた実生の茎に見えただろう。花は乾季末の数週間、それも雨後の朝に限られる。エセキボの白砂林を川筋から歩く者には小道の目印となったが、標本棚では名を持たぬ断片として、長く誤同定の側に置かれていたはずだ。

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