Archive of Vanished Flora
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霧解羊歯 Nebulofilix resolvens
Specimen · N°062 · 霧

Nebulofilix resolvens

霧の濃い夜にだけ、羊歯は握った拳をほどきます。

FOUND 6.2°N 116.7°E · ボルネオ島の雲霧林、標高約1800mの尾根筋  ·  ✝ EX · 最終確認 1981 年

霧解羊歯は、雲霧林の尾根に立つ木性シダ。高さ二〜三メートルの太い幹は木ではなく、古い葉柄の付け根と細い根が幾層にも積み重なった繊維の柱で、その層は歳月を年輪のように畳み込んでいる。幹の頂には大きな葉冠が放射状に広がり、その中心で、これから伸びる若葉が拳のように固く渦を巻く(フィドルヘッド)。この渦は乾いた昼のあいだは締まったままだが、霧の濃い夜になると、繊維の幹が空気の水分を吸い上げ、若葉の細胞がふくらんで内圧が高まり、渦はゆっくりと、音もなくほどけていく。朝、霧が晴れて空気が乾くと、まだ若い渦はふたたび少し締まる。だから葉を広げきるまで、この植物は霧の夜だけを選び、幾晩もかけて拳を少しずつほどいていく。

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肖像

標本写真 / archival still
霧解羊歯
STILL · 標本写真

「霧をほどく羊歯」

この標本に動く記録は残されていません。静止した一枚に、その姿をとどめています。

ARCHIVAL STILLPLATESILENT
Narration · ナレーション音声
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標本図版

8 枚 · ホバーで拡大
霧解羊歯 plate 1PLATE I
霧解羊歯 plate 2PLATE II
霧解羊歯 plate 3PLATE III
霧解羊歯 plate 4PLATE IV
霧解羊歯 plate 5PLATE V
霧解羊歯 plate 6PLATE VI
霧解羊歯 plate 7PLATE VII
霧解羊歯 plate 8PLATE VIII
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観察ノート

Habitat · 発見地
ボルネオ島の雲霧林、標高約1800mの尾根筋。昼夜を問わず雲がかかり、夜になると濃い霧が谷から湧き上がって木々のあいだに滞留する、常に湿った苔むした森。
Local name · 現地での呼び名
霧をほどく羊歯
Folklore · 現地伝承
現地では、この羊歯が一晩で拳をほどききると翌朝は必ず晴れ、渦を締めたままの夜は霧が幾日も居座ると言い伝えられ、木こりや猟師は森へ入る前に葉冠の中心を見上げ、渦のほどけ具合で天気を占ってきた。
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発見地

Coordinates
6.2°N 116.7°E
ボルネオ島の雲霧林、標高約1800mの尾根筋
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記録

霧の濃い夜にだけ、羊歯は握った拳をほどきます。

濃い霧が、乾いて締まっていた新芽の渦をゆるめるからです。

雲霧林の尾根、絶えず霧の湧く高さ千八百メートル。

太い幹は木ではなく、古い葉の付け根と細い根が積もった繊維の柱で、歳月を年輪のように畳み込んでいます。

その頂の葉冠の中心で、若葉は拳のように固く渦を巻いて夜を待ちます。

霧が幹に染み込むと細胞がふくらみ、渦はゆっくりと、音もなくほどけていきます。

More分類・学名・語源などの詳しい標本データ
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分類

分類・標本データ
Scientific name · 学名
Nebulofilix resolvens  M. Castellan, 1974
Taxonomy · 分類
植物界 › 被子植物門 › 双子葉植物綱 › NebulofilixalesNebulofilixaceaeNebulofilix › resolvens
Voucher · 標本
AVF-062 · Holotype
Archive of Vanished Flora (AVF)
Conservation · 保全状況
✝ EX — 絶滅 最終確認 1981 年
Collector · 採集
T. Okabe
1972-03-03
Synonym · 異名
Nebulofilixopsis resolvens K. Brandt, 1970
Protologue · 原記載(ラテン)
Suffrutex nanus, foliis imbricatis, floribus solitariis nocte apertis. Typus: ボルネオ島の雲霧林、標高約1800mの尾根筋. Species iam extincta.
Discovered / Described
1972 / 1974
草丈 Height
5〜15 cm
生活形 Life form
低木〜小高木
葉序 Phyllotaxy
互生
染色体数 Chromosome
2n = 18
開花期 Flowering
夜明け前〜早朝の数時間
送粉 Pollination
夜行性の小型蛾
基質・pH Substrate
礫質・ほぼ中性
標高 Elevation
2,000〜2,800 m
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語源

学名の語源
Nebulofilix属名 / GENUS
nebulo
resolvens種小名 / EPITHET
語源は記録に残っていない
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関連標本

同じ環境の標本

観察記録の追補

再訪と追記
2026-06-24 · 標本に残りにくい相

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2026-06-24 · 湧水斑と火入れ後の群落

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2026-06-24 · 短い花と読まれた季節

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