
この花が開くのは、一生に一度だけです。
時計輪蔓は、アンデスの雲霧林で苔むした木々をよじ登るつる植物。巻きひげは枝に触れた側だけが縮んで巻きつき、体を持ち上げていく。つるの先に、手のひらほどの放射状の大輪をひとつ掲げる。花の中心では、糸状の副花冠が幾重もの環をなして重なり、朝の光と気温の上昇に合わせて外側の環から順に開く。その動きが、歯車が噛み合う時計のように見える。副花冠は蜜のありかを虫に示す道しるべで、環が開ききると花は受粉を待つ。虫が花粉を運んだ瞬間、花は老化を促すエチレンを出し、いちばん内側の環をゆっくり閉じる。役目を終えた花は、日暮れまでにしぼんで落ちる。受粉しなくても花が開いていられるのは一日だけ。だからこの花に、二度目の朝はない。

PLATE I
PLATE II
PLATE III
PLATE IV
PLATE V
PLATE VI
PLATE VII
PLATE VIII
この花が開くのは、一生に一度だけです。
受粉を終えた花が、最後の環を閉じて果てるからです。
南米アンデスの雲霧林、標高千八百メートル。
巻きひげのつるが霧の木々をよじ登り、放射状の大輪をひとつ掲げます。
幾重もの副花冠が、朝から歯車のように順ぐりに開いていきます。
虫が花粉を運んだその瞬間、いちばん内側の環が音もなく閉じます。
稜線下の薄い土を払うと、表層根は雪解けの走る浅い腐植層に広がり、古い主根は石灰岩の節理へまっすぐ落ちていた。二相杉が裸地全体でなく、割れ目の列に沿ってだけ現れる理由はここにあるらしい。春の緑型は上の水を使い、灰緑型は下の水だけで枝を組み直す。
少雪年の翌春、角ばった灰緑の枝には雄花も若い球果もほとんど見えない。枝先は硬く、節間は詰まり、成長を守る姿に近い。反対に積雪後の緑型では、前年枝の内側に小さな雌球果が多く、風下の浅い礫地に実生が点々と出る。更新はないのではなく、雪のあった年にだけ見える。
灰緑型は四月末から六月初めまで高枝に限って現れ、夏には旧い緑枝の陰へ沈む。遠望では乾燥害を受けたアトラススギ、近くでは別の老木の枯れ込みと読まれやすい。林業標本は低枝を採るため届かず、写真も雪解け後の巡検年に偏る。見落としは怠慢でなく、現れる時間と場所が狭すぎる。