Archive of Vanished Flora
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獣宿壺 Zootheca latrinalis
Specimen · N°054 · 霧

Zootheca latrinalis

森でただ一匹の客だけに、蓋を開ける壺があります。

FOUND 6.1°N 116.6°E · ボルネオ島の高地、標高約2000mの尾根に広がる苔むした雲霧林  ·  ✝ EX · 最終確認 2009 年

獣宿壺は、苔むした雲霧林の低木に絡むつる性の食虫植物。枝先から握りこぶしほどの赤褐色の壺を鎖のように垂らす。ふつうのウツボカズラと違い、この壺は虫をほとんど捕らない。かわりに、大きく反り返った蓋の裏いちめんに甘い蜜腺を並べ、壺の口を、ある一種の小獣の体の長さぶんだけ蓋から離して開ける。蓋の縁には細い触毛が生え、その獣の重さでだけ押されると膨圧が抜けて蓋が持ち上がる。軽い虫では動かず、重すぎる獣にも閉じたまま——鍵の合う一種だけが蓋を開けられる。縁に乗った獣が蓋裏の蜜を舐めるあいだ、体はちょうど壺の口の上にくる。壺の消化液は弱く、獣が落とした糞だけをゆっくり溶かして、痩せた尾根のわずかな窒素をそこから得る。だから中に溜まるのは虫の殻ではなく、たった一種の獣の落としものだけだ。壺は森じゅうで、たった一匹の客のための便所を守り続けている。

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肖像

標本写真 / archival still
獣宿壺
STILL · 標本写真

「獣の厠(けもののかわや)」

この標本に動く記録は残されていません。静止した一枚に、その姿をとどめています。

ARCHIVAL STILLPLATESILENT
Narration · ナレーション音声
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標本図版

8 枚 · ホバーで拡大
獣宿壺 plate 1PLATE I
獣宿壺 plate 2PLATE II
獣宿壺 plate 3PLATE III
獣宿壺 plate 4PLATE IV
獣宿壺 plate 5PLATE V
獣宿壺 plate 6PLATE VI
獣宿壺 plate 7PLATE VII
獣宿壺 plate 8PLATE VIII
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観察ノート

Habitat · 発見地
ボルネオ島の高地、標高約2000mの尾根に広がる苔むした雲霧林。年中霧に包まれて日の光が乏しく、土壌の窒素が極端に少ない痩せた尾根にだけ現れる。つる性の茎を低木の枝に絡ませ、枝先から壺をひとつ鎖のように垂らす。
Local name · 現地での呼び名
獣の厠(けもののかわや)
Folklore · 現地伝承
現地では、この壺は森の主が飼う一匹の獣のためのもので、中を覗くと客の獣が二度と戻らず、蓋の開かなくなった壺は静かに枯れると語り継がれてきた。
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発見地

Coordinates
6.1°N 116.6°E
ボルネオ島の高地、標高約2000mの尾根に広がる苔むした雲霧林
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記録

森でただ一匹の客だけに、蓋を開ける壺があります。

この壺が生きるのは、たった一種の獣の糞だけを養分にするからです。

ボルネオの高地、霧に沈んだ標高二千メートルの尾根。

枝先から垂れた赤褐色の壺は、虫をほとんど捕りません。

大きく反り返った蓋の裏に甘い蜜をたたえ、鍵の合う獣だけを縁に招きます。

その重みで縁の触毛が押されたときにだけ、膨圧がゆるんで蓋が持ち上がります。

More分類・学名・語源などの詳しい標本データ
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分類

分類・標本データ
Scientific name · 学名
Zootheca latrinalis  L. Fontaine, 2002
Taxonomy · 分類
植物界 › 被子植物門 › 双子葉植物綱 › ZoothecalesZoothecaceaeZootheca › latrinalis
Voucher · 標本
AVF-054 · Holotype
Archive of Vanished Flora (AVF)
Conservation · 保全状況
✝ EX — 絶滅 最終確認 2009 年
Collector · 採集
T. Okabe
2000-07-01
Synonym · 異名
Zoothecopsis latrinalis R. Salvà, 1998
Protologue · 原記載(ラテン)
Suffrutex nanus, foliis imbricatis, floribus solitariis nocte apertis. Typus: ボルネオ島の高地、標高約2000mの尾根に広がる苔むした雲霧林. Species iam extincta.
Discovered / Described
2000 / 2002
草丈 Height
5〜15 cm
生活形 Life form
低木〜小高木
葉序 Phyllotaxy
互生
染色体数 Chromosome
2n = 26
開花期 Flowering
短い開花期(数日)
送粉 Pollination
風媒
基質・pH Substrate
礫質・ほぼ中性
標高 Elevation
2,000〜2,800 m
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語源

学名の語源
Zootheca属名 / GENUS
語源は記録に残っていない
latrinalis種小名 / EPITHET
語源は記録に残っていない
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関連標本

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観察記録の追補

再訪と追記
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