Archive of Vanished Flora
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渡り脚樹 Gradiradix aestuaria
Specimen · N°053 · 湿地

Gradiradix aestuaria

歩く木は、一生をかけてたった数メートルだけ進みます。

FOUND 5.0°N 115.0°E · 東南アジア、ボルネオ島北岸  ·  ✝ EX · 最終確認 1995 年

渡り脚樹は、泥干潟の縁に立つ高さ二、三メートルの低木で、体を幾本ものアーチ状の支柱根で泥の上に持ち上げている。細い脚で立つように見えるこの根は、成長の向きに強い偏りがある。潮が引いて泥が現れる海側にだけ新しい支柱根を次々と下ろし、陸側の古い根は役目を終えて朽ちていく。新しい根が幹を支えきると、幹の付け根はわずかに海側へ引き寄せられ、古い根の位置にはやがて泥だけが残る。この根の架け替えを何十年もくり返すうち、幹の中心は生まれた場所から数メートル、後退する潮を追うように移動していく。一年あたりの歩幅は指の幅ほどで、目には止まらない。だが背後に点々と残る古い切り株の列をたどれば、木が歩いてきた道筋がそのまま地面に刻まれている。

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肖像

標本写真 / archival still
渡り脚樹
STILL · 標本写真

「潮を追う木」

この標本に動く記録は残されていません。静止した一枚に、その姿をとどめています。

ARCHIVAL STILLPLATESILENT
Narration · ナレーション音声
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標本図版

8 枚 · ホバーで拡大
渡り脚樹 plate 1PLATE I
渡り脚樹 plate 2PLATE II
渡り脚樹 plate 3PLATE III
渡り脚樹 plate 4PLATE IV
渡り脚樹 plate 5PLATE V
渡り脚樹 plate 6PLATE VI
渡り脚樹 plate 7PLATE VII
渡り脚樹 plate 8PLATE VIII
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観察ノート

Habitat · 発見地
東南アジア、ボルネオ島北岸。潮汐差の大きい遠浅の泥干潟と、マングローブ林が海へ退いていく境界帯。干潮時に広大な泥が現れる場所にだけ立つ。
Local name · 現地での呼び名
潮を追う木
Folklore · 現地伝承
現地では、渡り脚樹が一歩進むごとに海が一歩遠のくと信じられ、この木が立つ場所は去年まで海だった、と語り継がれてきた。背後に残る切り株の列を数えれば、その浜が何年かけて海を失ってきたかがわかる、とも言う。
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発見地

Coordinates
5.0°N 115.0°E
東南アジア、ボルネオ島北岸
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記録

歩く木は、一生をかけてたった数メートルだけ進みます。

潮が引くたびに、古い支柱根を捨て、新しい脚を海側へ架け替えるからです。

東南アジア、干潟とマングローブが出会う泥の縁。

アーチ状の支柱根で体を持ち上げ、まるで幾本もの脚で立つように見えます。

海へ向かう側にだけ新しい根を伸ばし、陸側の古い根は静かに朽ちていきます。

こうして根の歩幅のぶんだけ、幹の中心は少しずつ潮を追って動いていきます。

More分類・学名・語源などの詳しい標本データ
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分類

分類・標本データ
Scientific name · 学名
Gradiradix aestuaria  Y. Aoki, 1988
Taxonomy · 分類
植物界 › 被子植物門 › 双子葉植物綱 › GradiradixalesGradiradixaceaeGradiradix › aestuaria
Voucher · 標本
AVF-053 · Holotype
Archive of Vanished Flora (AVF)
Conservation · 保全状況
✝ EX — 絶滅 最終確認 1995 年
Collector · 採集
Y. Aoki
1987-06-21
Synonym · 異名
Gradiradixopsis aestuaria T. Okabe, 1985
Protologue · 原記載(ラテン)
Planta humilis, caule brevissimo, petalis albidis nitentibus, in loco aperto crescens. Typus: 東南アジア、ボルネオ島北岸. Species iam extincta.
Discovered / Described
1987 / 1988
草丈 Height
5〜15 cm
生活形 Life form
低木〜小高木
葉序 Phyllotaxy
互生
染色体数 Chromosome
2n = 24
開花期 Flowering
干潮時の数時間(1日2回)
送粉 Pollination
風媒
基質・pH Substrate
礫質・ほぼ中性
標高 Elevation
0〜15 m
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語源

学名の語源
Gradiradix属名 / GENUS
語源は記録に残っていない
aestuaria種小名 / EPITHET
aestu
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関連標本

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観察記録の追補

再訪と追記
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