
水が引いたあとにだけ、この花は現れます。
引き水花は、高さ20〜25cmの湿地植物。雨季のあいだは水の底で根茎のまま休眠する。水が引いたやわらかい泥の上に、淡い黄色の小さな花を数日だけ開く。葉は幅広く、水をはじく。
PLATE I
PLATE II
PLATE III
PLATE IV
PLATE V
PLATE VI
PLATE VII
PLATE VIII
水が引いたあとにだけ、この花は現れます。
雨季のあいだ、株はずっと水の底で眠っています。
南米、パンタナールの季節氾濫原。
乾季のはじめ、水がゆっくりと引いていく湿地です。
水が去って、やわらかい泥が現れると、
引き水花は数日だけ、淡い黄色の花を開きます。
6月初旬、踏み込むと靴底が沈むほどの泥面に、同じ高さの花が帯状に現れた。開花は水際から半日遅れて内側へ進み、閉じかけた花では葯が柱頭に触れていた。訪花に頼り切らず、短い退水期に自家受粉で種子を残す構えと見える。
花後の小さな果実は倒れず、泥面がひび割れるころまで低く保たれる。乾いた外皮を割ると細かな種子が泥粒に混じっていた。次の増水で泥皮ごとほどけ、近くの低い窪地へ運ばれるのだろう。魚の多い年という伝承は、浅い水域が長く残る年の記憶と重なる。
この草が目立たなかった理由は、稀少性だけではない。高さは20cm余りで、花は数日、葉は泥を落とすと萎れて特徴を失う。古い採集票では『小型湿地草本』として近縁群に入れられた可能性が高い。細粒の沖積粘土が根茎を乾燥から守る場所に限られることも、記録の散在を説明する。