
火が通った後にだけ、この花は現れます。
野火花は、高さ15〜25cmの草原植物。細い茎の先に、深紅の小さな花を数輪つける。葉は細く灰緑色。種子は地中で眠り、野火の煙に触れて初めて目を覚ます。焼けて黒くなった地面に、いっせいに芽吹く。
PLATE I
PLATE II
PLATE III
PLATE IV
PLATE V
PLATE VI
PLATE VII
PLATE VIII
火が通った後にだけ、この花は現れます。
種は、煙の匂いを感じるまで眠り続けます。
南アフリカ、ケープの乾いた草原。
数年に一度、野火が走り抜ける丘です。
野火花の種は地中で待ち、煙に触れて初めて目を覚まします。
焼けて黒くなった地面に、深紅の小さな花がいっせいに開きます。
丘の尾根では、砂岩の崩れた浅い酸性土にだけ野火花が多かった。頁岩の粘る斜面ではまばらで、鉄分を含む赤土の窪地では葉ばかりが伸びる。平時には痩せすぎる土が、火後の灰で数週間だけリンとカリを帯びる。その短い緩みを、この草は競争相手より早く使うらしい。
火災後の三週目を過ぎると、花は急に萎み、地上部は乾いた草屑に紛れる。翌月には、そこに植物があった証拠は熟した細い蒴果だけである。採集標本が少ないのは不思議ではない。古い紙包みの中では、近縁の火後一年草として一度採られ、名札だけが別の束に移った可能性が高い。
群落は一面に咲くが、花粉を運ぶものを昼間にほとんど見ない。深紅の花冠は夕方に色を濃くし、葯は夜明け前にほどけるので、夜間の小型蛾が触れる余地はある。それでも孤立株にも少数の実がつく。短い火後の季節では、他殖を待ちつつ、最後には自家受粉で種子銀行をつなぐ仕組みなのだろう。