
この花は、海鳥のいる岩にしか咲きません。
岩黄花は、高さ12〜20cmの海岸植物。多肉質の厚い緑の葉をロゼット状に広げ、黄色い小さな菊形の花を密な房に咲かせる。海鳥の糞で富んだ岩の割れ目にだけ根を張り、塩と潮風に耐える。
PLATE I
PLATE II
PLATE III
PLATE IV
PLATE V
PLATE VI
PLATE VII
PLATE VIII
この花は、海鳥のいる岩にしか咲きません。
ほかの崖には、ほとんど見当たらないのです。
北大西洋の、切り立った海食柱。
潮と塩風に、絶えず叩かれる岩です。
岩黄花は、海鳥の糞で富んだ岩の割れ目にだけ根を張ります。
多肉質の厚い緑の葉を広げ、黄色い小さな菊形の花を房に咲かせます。
岩黄花は、崖面ならどこにでも出るわけではない。風化した砂岩や玄武岩の節理に、海鳥の糞、砕けた羽軸、海霧の塩分が薄く重なり、指先ほどの腐植ポケットを作る場所に限られる。根は深く潜らず、この暗い湿り気の膜を縫うように広がる。雨後にだけ葉が急に張るのは、岩そのものではなく、この短命な根圏を読んでいるためと思われる。
花房の周りには大型の訪花者をほとんど見ないが、静かな午前には小型のハナアブ類が葉陰から短く出入りする。送粉は崖内の隣株間に限られるらしい。一方、花後の痩果には淡い冠毛があり、乾いた西風の日に岩棚から離れて舞う。重い種子では海食柱を越えられないが、この軽い冠毛なら、数百メートル先の鳥の止まり場へ届く余地がある。
遠望の岩黄花は、白いグアノ筋の上に薄く散る黄色で、双眼鏡越しにはキオン類か海浜性キク科の一群に見える。群落の多くは営巣期の保護区内、垂直に近い海食柱の中段にあり、採集の足場がない。鳥類調査の記録に「黄色い花」とだけ残り、標本にはならなかった理由はここにある。名が漏れたのではなく、手の届く分類群へ押し込まれていたのだろう。