
潮が引く数時間だけ、海辺の岩で咲きます。
干潮花は、高さ6〜12cmほどの低いロゼット。厚く光沢のある暗緑色の葉を濡れた岩に張りつける。花は小さな白緑色の星形で、潮が引いて空気に触れる数時間だけ開き、潮が満ちると海の下に沈む。
PLATE I
PLATE II
PLATE III
PLATE IV
PLATE V
PLATE VI
PLATE VII
PLATE VIII
潮が引く数時間だけ、海辺の岩で咲きます。
潮が満ちれば、花は海の下へ沈みます。
北大西洋の、岩がちな海岸。
一日に二度、潮が引いたあとの濡れた黒い岩に、干潮花は現れます。
厚く光沢のある暗緑色の葉が、岩に張りついています。
その間から、小さな白緑色の星形の花が開きます。
干潮後一時間ほどで花冠が開くが、訪花昆虫はほとんど見なかった。葯は風を待つ位置ではなく柱頭に近く、花粉は乾いた空気で粉状になってから同じ花内に落ちるらしい。満潮時には膨れた果皮が裂け、粘る種子だけが近くの岩隙へ洗い込まれる。遠くへ散る植物ではなく、同じ岩を世代ごとに厚くする植物である。
群落は黒い濡れ岩のすべてにあるわけではなく、古い玄武岩とドレライトの面、とくに気泡孔の多い潮だまり縁に偏っていた。葉は平たく張りつくが、根は岩面ではなく微細な孔と塩類の白く残る割れ目へ入る。雨で洗われすぎる上段にも、砂に埋もれる下段にも少ないことから、乾湿と塩分が交互に来る狭い帯が定着帯と思われる。
花のない時期の干潮花は、暗緑のロゼットというより濡れた海藻片か地衣の縁に見える。遠目にはヒバマタ類の幼体、近くでは小型の海岸植物の越冬葉として片づけられやすい。白緑の星形花が群落として読めるのは、春の大潮干潮が晴天に当たる数日だけで、曇天やうねりの残る日は岩の反射に消えてしまう。未記録であった理由は、稀少性より観察窓の狭さにある。