
火山が噴いた、翌年だけ咲きます。
灰被り花は、高さ12〜18cmほどの細い一年草。灰をかぶった細い緑の葉を持ち、鮮やかな朱赤色の筒状花を咲かせる。噴火の熱と灰がもたらす養分でだけ発芽し、灰に色を取り戻すように咲く。
PLATE I
PLATE II
PLATE III
PLATE IV
PLATE V
PLATE VI
PLATE VII
PLATE VIII
火山が噴いた、翌年だけ咲きます。
灰しかない斜面に、ふいに色が戻ります。
インドネシアの、噴火を終えたばかりの火山。
草木の戻らない灰の斜面に、灰被り花は一斉に現れます。
灰をかぶった細い緑の葉が、斜面に点々と伸びます。
その先に、鮮やかな朱赤色の筒状の花が開きます。
開花は夜明けから午前に偏り、朱赤の筒花は灰色の斜面で遠くからよく立つ。花筒の奥に薄い蜜があり、噴火後の裸地を横切るメジロ類や大型ハナバチだけが短く訪れる。花数に比べ結実は疎らだが、群落全体が同時に咲くため、数日の風と鳥の通過で足りるらしい。
花後の蒴果は乾くと三裂し、黒褐色の微細な種子を灰の表面へこぼす。種子は軽すぎて遠くへは飛ばず、雨の初めに火山砂の亀裂や礫の下へ沈む。次の草本が根を張る頃には地上から見えないが、熱で焼けた薄い土層の下に休眠していると考えるのが自然である。
斜面の人々はこの草をインドネシア語で api tersisa、ジャワ語で turahing geni とも呼び、『火の名残』と訳す。よく咲くのは大きな噴火で山体の圧が抜け、翌季に細かな降灰だけが残る年である。花が静けさを告げるという伝承は予言ではなく、噴火後の地形と火山活動を読む経験則に近い。