
その花は、夜明けとともに消えます。
夜露輪花は、高さ8〜14cmほどの低い多年草。強風を避けるように岩肌へ張りつき、銀灰色の細い葉を放射状に広げる。茎は短く赤褐色で、雨後にだけ基部の貯水組織が膨らむ。花は淡い青灰色の皿形で、外側に半透明の萼を持つ。一晩だけ開花し、夜明け前に萼と花冠が水分を失って薄い膜状に縮むため、朝には岩のくぼみに小さな湿った輪だけが残る。
PLATE I
PLATE II
PLATE III
PLATE IV
PLATE V
PLATE VI
PLATE VII
PLATE VIII
朝には、輪だけが残ります。
花が咲いた証拠は、それだけです。
パタゴニア南部の風の草原。
乾季が始まる直前、雨を含んだ岩棚に、夜露輪花は一晩だけ姿を見せます。
高さは手のひらより低く、銀灰色の葉を地面に伏せるように広げます。
雨のあと、根元の小さな貯水組織が膨らみ、夜になると淡い青灰色の花を開きます。
開花個体を雨後の岩棚で二度観察したが、訪花昆虫はほとんど見なかった。雄蕊は花冠が開ききる前から柱頭へ寄り、自家受粉を先に済ませる構造に見える。ただ、無風に近い夜には微小な双翅類が萼の内側を歩く例があり、まれな他家受粉の余地は残る。
萎れた輪の外側には、翌朝、小さな褐色の粒が数個残ることがある。水を含むと外皮が粘り、玄武岩の微細な割れ目に貼りつく。踏み跡の中央では砂礫が動きすぎるが、少し離れた岩棚の窪みでは粘液が乾いて種子を固定し、小群落が弧状に並ぶ理由になる。
花のない株は、銀灰色の葉を岩面に伏せ、地衣類や小型のクッション植物と紛れる。乾季に入ると貯水組織は縮み、赤褐色の茎も割れ目の影に沈むため、採集者の目には標本価値の低い付着物に見えただろう。花だけが同定の鍵だが、それは雨後の一夜に限られる。