Archive of Vanished Flora
標本を呼び出しています…
引き際岩花 Petranthus caatingae
Specimen · N°032 · 岩 · ▶ 動画あり

Petranthus caatingae

満水のあいだ、この植物は根を持ちません。

FOUND 8.0°S 39.5°W · ブラジル北東部、カアチンガの花崗岩インゼルベルク  ·  ✝ EX · 最終確認 1981 年

引き際岩花は、高さ8cmほどの小さな植物。プールが満水のあいだは根を作らず、オリーブ色の細い葉をロゼットに広げて水面に漂い、淡い黄色の星形の花をつける。乾季の強い日差しで水が蒸発し、水深が決まった高さを下回ったその数時間だけ、赤みを帯びた細い根毛を一気に伸ばして、ピンクがかった灰色の花崗岩へ自らを固定する。固定できる好機は一季にわずか数時間。乗り遅れた株は、次の乾季まで根を持てないまま漂い続ける。

01

肖像

縦型のまま / tap to play
FULL FILM · SNSにも公開

「水の引き際の花」

この記録映像は縦型(9:16)で制作され、SNSにも公開されています。アーカイブでは原寸の比率のまま収蔵します。

9:16 VERTICALFULL EDITSOUND ON
Narration · ナレーション音声
0:00 / --:--
02

標本図版

8 枚 · ホバーで拡大
引き際岩花 plate 1PLATE I
引き際岩花 plate 2PLATE II
引き際岩花 plate 3PLATE III
引き際岩花 plate 4PLATE IV
引き際岩花 plate 5PLATE V
引き際岩花 plate 6PLATE VI
引き際岩花 plate 7PLATE VII
引き際岩花 plate 8PLATE VIII
03

観察ノート

Habitat · 発見地
ブラジル北東部、カアチンガの花崗岩インゼルベルク。乾季、岩のくぼみにできた一時的な岩盤プールが、蒸発で浅くなっていく水際にだけ現れる。
Local name · 現地での呼び名
水の引き際の花
Folklore · 現地伝承
現地では、引き際岩花が岩へ着いた朝はその年の乾季が本格化する合図とされ、水の引き際を読む花として語られてきた。
04

発見地

Coordinates
8.0°S 39.5°W
ブラジル北東部、カアチンガの花崗岩インゼルベルク
05

記録

満水のあいだ、この植物は根を持ちません。

固定できる時間は、一季にたった数時間だけです。

ブラジル北東部、カアチンガの花崗岩の丘。

乾季の強い日差しが、岩のくぼみの水を少しずつ蒸発させていきます。

水深が決まった高さを下回った、その数時間。

引き際岩花は、赤い根毛を一気に伸ばして岩へ固定します。

More分類・学名・語源などの詳しい標本データ
06

分類

分類・標本データ
Scientific name · 学名
Petranthus caatingae  M. Castellan, 1978
Taxonomy · 分類
植物界 › 被子植物門 › 双子葉植物綱 › PetranthalesPetranthaceaePetranthus › caatingae
Voucher · 標本
AVF-032 · Holotype
Archive of Vanished Flora (AVF)
Conservation · 保全状況
✝ EX — 絶滅 最終確認 1981 年
Collector · 採集
E. Mori
1978-09-09
Synonym · 異名
Petropsis caatingae K. Brandt, 1976
Protologue · 原記載(ラテン)
Herba parva rosulata, foliis crassis glaberrimis, floribus parvis stellatis. Typus: ブラジル北東部、カアチンガの花崗岩インゼルベルク. Species iam extincta.
Discovered / Described
1978 / 1978
草丈 Height
8cm
生活形 Life form
ロゼット状の多年草
葉序 Phyllotaxy
根生葉(ロゼット)
染色体数 Chromosome
2n = 30
開花期 Flowering
撹乱(噴火・野火)の翌季
送粉 Pollination
小型の双翅目・膜翅目
基質・pH Substrate
礫質・ほぼ中性
標高 Elevation
200〜1,200 m
07

語源

学名の語源
Petranthus属名 / GENUS
anth
caatingae種小名 / EPITHET
語源は記録に残っていない
08

関連標本

同じ環境の標本

観察記録の追補

再訪と追記
2026-06-24 · 退水線の花

開花は水面に浮く時期から始まるが、花弁が開くころには葯はすでに柱頭へ触れている。外来の送粉者を待つ構造ではなく、水深低下の数日前に閉鎖受粉を済ませる短命花とみるべきである。根毛を岩へ下ろす数時間は、繁殖の開始ではなく、受精後の胚珠を乾いた岩面へ残すための位置取りに近い。

2026-06-24 · 鉱物膜に残る種子

水が消えた皿状のくぼみには、雲母片と粘土の薄い鉱物膜が残る。固定に成功した株はそこで縮み、果皮は裂けずに軟化し、微細な種子だけが粘液で花崗岩へ貼りつく。雨季の最初の流入で流される種子も多いが、縁の微細な段差に残ったものだけが翌乾季の同じ退水線に群落をつくる。

2026-06-24 · 記録されにくい岩場

産地の多くは牧場奥の孤立したインゼルベルクで、雨後は近づきにくく、乾いたころには植物体は地衣類の痂皮か小型水草の死骸に見える。花を見られる朝は短く、標本にするとロゼットは収縮して特徴を失う。現地名 flor-da-baixa-d'agua は、水場を移す時期を読む牧人の言葉として残ったらしい。

⟵ 標本世界地図
EN