
雷雨が過ぎた、翌朝にだけ開きます。
雷明け花は、高さ15〜20cmの高山植物。葉は細く銀緑色。雷雨が大気を洗い流した翌朝、湿った澄んだ空気の下でだけ、濃い藍色の花をいっせいに開く。乾いた晴天の朝には花を開かない。
PLATE I
PLATE II
PLATE III
PLATE IV
PLATE V
PLATE VI
PLATE VII
PLATE VIII
雷雨が過ぎた、翌朝にだけ開きます。
乾いた晴れの朝には、決して花を開きません。
チベット高原、標高四千メートルの草原。
夏の午後、雷雨がたびたび空を洗う土地です。
雨が大気を洗い流した、澄んだ朝の空気のもとで、
雷明け花は、濃い藍色の花をいっせいに開きます。
雷明け花は草原のどこにでも出るのではなく、石灰質の薄い礫土が凍結融解で波打つ小丘の肩に多い。表土の下には細い粘土質レンズがあり、雷雨の後だけ水を半日ほど抱える。銀緑の細葉は強い日射への備えであると同時に、この浅く乾きやすい土壌に根を深く入れられないことのしるしでもある。
開花は雷雨翌朝の湿度が残る数時間にそろう。花冠の奥には薄い蜜が少量あり、雨上がりに地表近くを飛ぶ小型のハナアブ類が訪れるらしい。訪花がなければ、午後には雄蕊が内側へ倒れて柱頭に触れる。群落の一斉開花は他家受粉の機会を広げ、同時に短い季節で結実を取り逃がさない保険にもなっている。
乾いた晴天の朝、同じ株はただの銀緑の細葉に見え、濃藍の花は閉じて萼の陰に隠れる。採集隊が昼前に通れば、標本紙に残るのは近縁の高山草本と区別しにくい葉束だけである。雷雨の翌朝という短い窓、礫地に点在する小群落、押し葉で失われる花色が、この植物を記録の縁に追いやったのだろう。