
光が一筋だけ届く、洞窟の入り口に咲きます。
洞口花は、高さ12〜20cmのひょろりとした多年草。光が乏しいため葉は淡い黄緑色で薄く、茎は細く長い。花は白く、洞窟に差し込む一筋の光の方向へ、ゆっくりと向きを変える。
PLATE I
PLATE II
PLATE III
PLATE IV
PLATE V
PLATE VI
PLATE VII
PLATE VIII
光が一筋だけ届く、洞窟の入り口に咲きます。
花はその一筋の光だけを、追いかけ続けます。
東南アジアの、石灰岩の洞窟。
外の光がわずかに差し込む薄暗い縁に、洞口花は生えます。
光が乏しいため、葉は淡い黄緑色で薄く広がります。
細く長い茎の先に、白い花がひとつ開きます。
洞口花を見落とす理由は、場所よりも時刻にある。乾季明けの最初の雨から二、三日だけ白い花を開き、直射が洞口の床を細く切る朝の間にだけ花冠を保つ。昼前には萼に沈むように閉じ、午後の標本採集では淡い葉と細い茎だけが残る。葉だけなら、石灰岩の割れ目に生える普通の陰地性草本として片づけられただろう。
同じ石灰岩洞でも、すべての入口に生えるわけではない。花の向きがそろう群落は、東寄りに開き、雨季前後の低い斜光が数分だけ奥壁の基部に届く洞口に限られる。天井からの滴水は多すぎず、床土は石灰粉を含む薄い腐植でなければならない。この条件を外すと葉は出ても茎は伸びず、花芽は黒く萎れる。分布図では点ではなく、方位と岩の割れ目の一致として現れる植物である。
花冠の奥には甘い匂いがほとんどなく、夜明けと夕方に洞口を通る小型の蛾やハエ類を待つ構造に見える。花粉は乾きやすく、湿った朝には粘りを戻す。結実後の種子は軽く飛ばず、雨滴に叩かれて石灰岩の割れ目へ落ちる。炭焼きや採集者、参道を歩く人々が『光追い』の向きを見たのは、この朝の乾き具合を読むためで、晴天の占いというより経験的な天気の記憶であった。