
動かないのに、地下ではまるで別の形をしています。
根組みなおしは、高さ10cmほどの低いクッション状の植物。灰緑色の多肉質な鱗状の葉を半球形に密に重ね、短い花茎の先に淡い藤色の星形の小花をいくつもつける。白い石膏の地面に根を下ろすが、その根は地中の石膏が雨水でゆっくり溶けて空洞ができるたび、空洞が崩れる前に太い淡色の根を伸ばし直して骨組みを作りなおす。地表に見える株の位置は何年も変わらないのに、地下の根の形は雨のたびに別物になっている。雨上がりには、溶けて後退した石膏の縁から、白い太い根冠の一部が露わになっていることがある。

PLATE I
PLATE II
PLATE III
PLATE IV
PLATE V
PLATE VI
PLATE VII
PLATE VIII
動かないのに、地下ではまるで別の形をしています。
地表の株は、何年も同じ場所から動きません。
イラン中部高原、白い石膏の丘。
雨水が地中の石膏をゆっくり溶かし、空洞をつくります。
根組みなおしは、空洞が崩れる前に太い根を伸ばし直します。
そうして地下の骨組みを、雨のたびに作りなおすのです。
最初の降雨から三日ほどで、淡藤色の花は石膏丘の風下側から開きはじめる。日中に小型のハナバチが来ることもあるが、花粉は乾くと微粉となり、低い株間を吹き抜ける風でも柱頭に届くらしい。結実した蒴果は裂けても遠くへ飛ばず、石膏粉をまとった重い種子を親株近くの細い割れ目へ落とす。群落が丘の白い稜線に沿って途切れ途切れに続くのは、そのためと思われる。
この植物の異様さは、地上部だけを採ればほとんど失われる。露出した白い根冠は強い雨の後、石膏の縁が溶けて退いた数日のあいだだけ見える。乾けば同じ白色の粉に埋もれ、掘り上げれば脆い石膏の骨組みごと崩れる。押し葉標本では灰緑色の小さなクッションとしか残らず、既知の石膏性植物に紛れてしまう理由は十分にある。
羊道は白い丘の肩を避け、古い井戸へ向かう黒い礫の帯を選んでいる。案内人は雨上がりの石膏丘を横切らず、露わになった根を踏むと次の冬に斜面が割れると言った。禁忌というより、崩れやすい縁を読んだ経験則だろう。根組みなおしの株が道標のように同じ場所へ残ることが、移動する牧夫にとって丘の固さを測る目印になっていたらしい。