
雨が降ると、この草は葉を閉じて隠れます。
雨隠れ草は、高さ10〜15cmほどのシダ状の多年草。羽のように細かく分かれた銀緑色の葉を放射状に広げる。雨粒が当たると小葉を素早く内側へ閉じ、雨がやむと再び開く。花は小さな白い星形。
PLATE I
PLATE II
PLATE III
PLATE IV
PLATE V
PLATE VI
PLATE VII
PLATE VIII
雨が降ると、この草は葉を閉じて隠れます。
まるで、濡れるのを嫌がるように。
ニュージーランド南西部、フィヨルドランドの雨林。
苔むした岩肌に絶えず霧雨が落ちる場所に、雨隠れ草は生えます。
羽のように分かれた銀緑色の葉が、放射状に広がっています。
雨粒が触れると、小さな葉は次々と内側へたたまれていきます。
花は終日の開放ではなく、雨脚が弱まり岩面の滴下が一時細る十数分にだけ星形を保つ。白色は林床で目立つほどではないが、薄明の谷壁では小型の糞生・腐植食性ハエ類に十分な標識となる。訪花は稀で、結実率も低い。その不足を補うように、株は岩の割れ目へ短い匍匐茎を差し込み、同じ滲出水の筋に沿って小群落を作る。
分布は単なる湿り気では説明できない。多くの株は氷河に磨かれた酸性の片麻岩・花崗岩質壁面で、腐植が爪先ほどに薄く溜まる棚に限られる。根は土を深く探らず、苔の下を這って鉱物分の少ない滲出水を受ける。銀緑色の小葉と低い草丈は、強い光への適応というより、貧栄養と常時濡れる葉面で失われる養分を抑える形に見える。
『雨たたみ』は古い神話名というより、湾岸を歩いた猟師、測量助手、シカ道を読む人々の実用語だったらしい。一斉に閉じる朝は、雨粒そのものより先に気圧低下と霧の飽和を受けているのだろう。日当たりのよい谷や石灰質の崖では見つからず、名が残る場所も、長雨で道が消える暗い支谷に偏る。不在の範囲が、この草の性質をよく語っている。