Archive of Vanished Flora
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封瓢樹 Sphragidocarpus nocturnus
Specimen · N°068 · 砂

Sphragidocarpus nocturnus

この果実は、一年に一夜しか落ちません。

FOUND 11.1°N 19.4°E · アフリカ中央部の季節河畔林  ·  ✝ EX · 最終確認 1991 年

封瓢樹は、アフリカの季節河畔林に立つ高さ十メートルほどの大木。灰色のざらついた樹皮と羽状の葉を広げ、枝からは長く細い木質の柄で、淡い褐色をした瓢型の巨大な果実をいくつも吊り下げる。果実は硬い木質の殻を持ち、乾季のあいだにゆっくりと熟して乾いていく。乾ききると枝との継ぎ目に離層ができ、殻はわずかな衝撃で縫い目に沿って割れるようになる。そして乾季の終わり、乾いた夜風がひと晩だけ強く吹く晩に、熟した瓢はいっせいに枝を離れて地に落ち、殻を割る。割れた殻の中では、種が繊維の小部屋に幾段にも整然と並び、まるで封じられた記録のようだ。だが、それが本当にその一夜だけに起きるのか、落ちる瞬間を見届けた者はまだいない。

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肖像

標本写真 / archival still
封瓢樹
STILL · 標本写真

「夜落ちの瓢」

この標本に動く記録は残されていません。静止した一枚に、その姿をとどめています。

ARCHIVAL STILLPLATESILENT
Narration · ナレーション音声
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標本図版

8 枚 · ホバーで拡大
封瓢樹 plate 1PLATE I
封瓢樹 plate 2PLATE II
封瓢樹 plate 3PLATE III
封瓢樹 plate 4PLATE IV
封瓢樹 plate 5PLATE V
封瓢樹 plate 6PLATE VI
封瓢樹 plate 7PLATE VII
封瓢樹 plate 8PLATE VIII
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観察ノート

Habitat · 発見地
アフリカ中央部の季節河畔林。雨季には水が流れ、乾季には干上がる砂の川床に沿って点在する疎林。乾季の終わりには草が黄金色に枯れ、日中は乾いた熱風が吹き、夜は急に冷え込む半乾燥の環境。
Local name · 現地での呼び名
夜落ちの瓢
Folklore · 現地伝承
現地では、夜に瓢の落ちる鈍い音が聞こえた朝を、その年の乾季が明ける境目と数えてきた。割れた殻に整然と並ぶ種の段を読み、来たる雨季の実りを占ったとも語り継がれている。
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発見地

Coordinates
11.1°N 19.4°E
アフリカ中央部の季節河畔林
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記録

この果実は、一年に一夜しか落ちません。

熟して乾ききった重い瓢が、枝との継ぎ目をゆるめ、落ちる夜を待っているからです。

アフリカの季節河畔林、乾季の終わり。

木は枝から、瓢型の巨大な果実をいくつも吊り下げています。

硬い木質の殻の中で、種は幾段にもきちんと並んでいます。まるで封じられた記録のように。

乾いた夜風がひと晩だけ強く吹くと、熟した瓢はいっせいに枝を離れます。

More分類・学名・語源などの詳しい標本データ
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分類

分類・標本データ
Scientific name · 学名
Sphragidocarpus nocturnus  C. Iwabuchi, 1984
Taxonomy · 分類
植物界 › 被子植物門 › 双子葉植物綱 › SphragidocarpalesSphragidocarpaceaeSphragidocarpus › nocturnus
Voucher · 標本
AVF-068 · Holotype
Archive of Vanished Flora (AVF)
Conservation · 保全状況
✝ EX — 絶滅 最終確認 1991 年
Collector · 採集
E. Mori
1984-09-18
Synonym · 異名
Sphragidocarpopsis nocturnus A. Reinholt, 1982
Protologue · 原記載(ラテン)
Herba parva rosulata, foliis crassis glaberrimis, floribus parvis stellatis. Typus: アフリカ中央部の季節河畔林. Species iam extincta.
Discovered / Described
1984 / 1984
草丈 Height
5〜15 cm
生活形 Life form
低木〜小高木
葉序 Phyllotaxy
互生
染色体数 Chromosome
2n = 30
開花期 Flowering
夜明け前〜早朝の数時間
送粉 Pollination
夜行性の小型蛾
基質・pH Substrate
礫質・ほぼ中性
標高 Elevation
200〜1,200 m
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語源

学名の語源
Sphragidocarpus属名 / GENUS
語源は記録に残っていない
nocturnus種小名 / EPITHET
nocturn夜の
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関連標本

同じ環境の標本

観察記録の追補

再訪と追記
2026-06-24 · 雨後の識別期

根が緑に見えるのは、崩落から三日ほどの間に限られることが多い。黄土面が乾くと表皮は灰白に戻り、株全体もヨモギ類やイネ科の幼株に紛れる。採集者が近づける頃には斜面はひび割れ、標本にすべき異常はすでに失われている。記録から漏れた理由は、希少性よりも観察可能な時間の短さにある。

2026-06-24 · 花を見ない理由

開いた花はまだ見ていない。葉腋に米粒ほどの閉鎖花がつき、雨後にだけ膨らむらしい。乾いた年にはそのまま萎み、湿りが続いた年だけ重い種子を落とす。種子には冠毛も翼もなく、風で遠くへ行くより、崩落面の小さな割れ目へ転がり込む形をしている。これは峡谷内に群落が細く続くこととよく合う。

2026-06-24 · 安定のしるし

村人がいう「転根草の立った斜面」は、崩れない土地というより、次の大崩れまで少し猶予のある面を指すようだ。根が露出してなお緑を保つには、崩落直後の粉土が薄く固まり、水が一度は通った割れ目が残る必要がある。その条件では数年、畑の縁や苗床として使えることがある。伝承は断言ではなく、植え付けを待つための経験的な目印であった。

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