
この果実は、一年に一夜しか落ちません。
封瓢樹は、アフリカの季節河畔林に立つ高さ十メートルほどの大木。灰色のざらついた樹皮と羽状の葉を広げ、枝からは長く細い木質の柄で、淡い褐色をした瓢型の巨大な果実をいくつも吊り下げる。果実は硬い木質の殻を持ち、乾季のあいだにゆっくりと熟して乾いていく。乾ききると枝との継ぎ目に離層ができ、殻はわずかな衝撃で縫い目に沿って割れるようになる。そして乾季の終わり、乾いた夜風がひと晩だけ強く吹く晩に、熟した瓢はいっせいに枝を離れて地に落ち、殻を割る。割れた殻の中では、種が繊維の小部屋に幾段にも整然と並び、まるで封じられた記録のようだ。だが、それが本当にその一夜だけに起きるのか、落ちる瞬間を見届けた者はまだいない。

PLATE I
PLATE II
PLATE III
PLATE IV
PLATE V
PLATE VI
PLATE VII
PLATE VIII
この果実は、一年に一夜しか落ちません。
熟して乾ききった重い瓢が、枝との継ぎ目をゆるめ、落ちる夜を待っているからです。
アフリカの季節河畔林、乾季の終わり。
木は枝から、瓢型の巨大な果実をいくつも吊り下げています。
硬い木質の殻の中で、種は幾段にもきちんと並んでいます。まるで封じられた記録のように。
乾いた夜風がひと晩だけ強く吹くと、熟した瓢はいっせいに枝を離れます。
根が緑に見えるのは、崩落から三日ほどの間に限られることが多い。黄土面が乾くと表皮は灰白に戻り、株全体もヨモギ類やイネ科の幼株に紛れる。採集者が近づける頃には斜面はひび割れ、標本にすべき異常はすでに失われている。記録から漏れた理由は、希少性よりも観察可能な時間の短さにある。
開いた花はまだ見ていない。葉腋に米粒ほどの閉鎖花がつき、雨後にだけ膨らむらしい。乾いた年にはそのまま萎み、湿りが続いた年だけ重い種子を落とす。種子には冠毛も翼もなく、風で遠くへ行くより、崩落面の小さな割れ目へ転がり込む形をしている。これは峡谷内に群落が細く続くこととよく合う。
村人がいう「転根草の立った斜面」は、崩れない土地というより、次の大崩れまで少し猶予のある面を指すようだ。根が露出してなお緑を保つには、崩落直後の粉土が薄く固まり、水が一度は通った割れ目が残る必要がある。その条件では数年、畑の縁や苗床として使えることがある。伝承は断言ではなく、植え付けを待つための経験的な目印であった。