
水が来るより、ずっと前に芽を出します。
先触れ草は、高さ10cmほどの小さな多肉植物。淡い銀青色のやや透き通った葉を平たいロゼット状に低く広げ、細い淡色の茎の先に、ほのかに銅色を帯びた小さな白い星形の花をひとつつける。何百キロも上流で降った雨が、地下の砂礫を伝って流域へ近づくと、地表に水が届くよりずっと前に、混ざり合った地下水の同位体組成だけを手がかりに発芽する。だから乾いて割れたままの硬いクレイパンに、突然この草が現れる。地表に水が満ちるのは、それから数週間あとのことだ。土はまだ乾いているのに、出現はいつも洪水に先んじている。

PLATE I
PLATE II
PLATE III
PLATE IV
PLATE V
PLATE VI
PLATE VII
PLATE VIII
水が来るより、ずっと前に芽を出します。
地表は、まだ硬く乾いたままなのに。
オーストラリア南部、レイク・エア流域。
何百キロも上流の水が、地下の砂礫を伝って近づくと、
先触れ草は、混ざり合った地下水のわずかな違いだけを頼りに発芽します。
銀青色の葉を平たく広げ、銅色を帯びた白い星形の花をひとつ咲かせます。
開花株を掘り上げると、花糸は短く、葯は柱頭を抱くように内側へ倒れていた。風の強い午後だけ花被が少し開くが、送粉を待つ構造ではない。基本は自殖で、塩殻の割れ目を渡る小型のハエや砂風が、まれに隣株の花粉を運ぶ程度と見られる。乾いた湖床で花を急ぐ理由は、洪水前の数日を結実に使うためである。
結実後の蒴果は水を吸うとすぐ裂け、微細な種子を泥の表面へ薄く散らす。流れに乗って遠くへ運ばれるのではなく、湖水が退く過程で塩泥に貼りつく性質が強い。乾燥すると種皮は塩殻の中に埋もれ、次の同位体変化まで休眠する。群落が帯状に現れるのは、前回の水位線と泥の乾き方をなぞるためだろう。
発芽から結実までは、早い年で一週間を越えない。水が地表に達した時には株は泥水に沈み、押し花にできる形を失う。乾いた残骸だけを拾えば、銀青色は褪せ、既知の塩生アカザ類の幼株と区別しにくい。古い通行者は、この草を採集対象ではなく、塩湖縁を渡る時期や家畜を低地へ入れるかを測る合図として見ていたらしい。