Archive of Vanished Flora
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遠縁草 Radix dispersa tschadensis
Specimen · N°043 · 水

Radix dispersa tschadensis

別々に咲く花が、地の底では一つかもしれません。

FOUND 13.2°N 14.5°E · 中央アフリカ、チャド湖東岸  ·  ✝ EX · 最終確認 1995 年

遠縁草は、ひび割れた乾いた泥土から立ち上がる高さ20cmほどの草。淡い葉脈の走るオリーブ色のへら形の葉を低く広げ、淡い赤褐色の長い茎の先に、中心の暗い鈍い琥珀色の星形の花をひとつだけつける。地上では一株ずつ遠く離れて見えるのに、地下深くでは古い一本の根が横へ伸び、その第二層から離れた場所に芽を押し上げているらしい。湖岸が後退した年にだけ芽吹き、再び水が戻れば地上の姿は消え、根だけが乾いた泥の下で次の後退を待つ。別々に見える株が、本当はたった一つの個体なのか、誰もまだ確かめられていない。

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肖像

標本写真 / archival still
遠縁草
STILL · 標本写真

「離れて咲く一つの草」

この標本に動く記録は残されていません。静止した一枚に、その姿をとどめています。

ARCHIVAL STILLPLATESILENT
Narration · ナレーション音声
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標本図版

8 枚 · クリックで拡大
遠縁草 plate 1PLATE I
遠縁草 plate 2PLATE II
遠縁草 plate 3PLATE III
遠縁草 plate 4PLATE IV
遠縁草 plate 5PLATE V
遠縁草 plate 6PLATE VI
遠縁草 plate 7PLATE VII
遠縁草 plate 8PLATE VIII
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観察ノート

Habitat · 発見地
中央アフリカ、チャド湖東岸。湖岸線が数キロ後退した年にだけ、干上がって露出する灰褐色のひび割れた砂泥地に、互いに遠く離れて点々と現れる。
Local name · 現地での呼び名
離れて咲く一つの草
Folklore · 現地伝承
現地では、遠縁草が広く散らばって咲いた年は湖が大きく退いた年と知られ、遠く離れた株どうしが地の底でつながっていると言い伝えられてきた。
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発見地

Coordinates
13.2°N 14.5°E
中央アフリカ、チャド湖東岸
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記録

別々に咲く花が、地の底では一つかもしれません。

誰もまだ、その境目を見たことがありません。

中央アフリカ、チャド湖の東岸。

湖が数キロ退いた年にだけ、ひび割れた泥土が現れます。

遠縁草は、その乾いた灰褐色の地面に点々と芽吹きます。

地上では遠く離れているのに、地下深くでは古い一本の根がつないでいます。

More分類・学名・語源などの詳しい標本データ
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分類

分類・標本データ
Scientific name · 学名
Radix dispersa tschadensis  Y. Aoki, 1992
Taxonomy · 分類
植物界 › 被子植物門 › 双子葉植物綱 › RadixalesRadixaceaeRadix › dispersa
Voucher · 標本
AVF-043 · Holotype
Archive of Vanished Flora (AVF)
Conservation · 保全状況
✝ EX — 絶滅 最終確認 1995 年
Collector · 採集
N. Drei
1989-08-05
Synonym · 異名
Radixopsis dispersa T. Okabe, 1987
Protologue · 原記載(ラテン)
Herba perennis, rhizomate tenui, foliis linearibus, inflorescentia pauciflora. Typus: 中央アフリカ、チャド湖東岸. Species iam extincta.
Discovered / Described
1989 / 1992
草丈 Height
20cm
生活形 Life form
多年草
葉序 Phyllotaxy
互生
染色体数 Chromosome
2n = 28
開花期 Flowering
撹乱(噴火・野火)の翌季
送粉 Pollination
小型の双翅目・膜翅目
基質・pH Substrate
礫質・ほぼ中性
標高 Elevation
200〜1,200 m
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語源

学名の語源
Radix属名 / GENUS
語源は記録に残っていない
dispersa種小名 / EPITHET
語源は記録に残っていない
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関連標本

同じ環境の標本

観察記録の追補

再訪と追記
2026-06-24 · 結実の年

多くの年、遠縁草は花を掲げても痩せたまま終わる。地下の古根から次の芽を送るだけで、群落は増えたように見えて増えていない。だが湖岸の後退が二雨季を越えて続いた年、暗い琥珀色の花の基部に小さな蒴果が残った。訪花が乏しくても自家和合で結ぶらしく、熟した種子は割れ目に落ち、泥が再び閉じるまでそこで休む。

2026-06-24 · 低い訪花者

花は目立つ色ではないが、乾いた湖泥の上では鈍い琥珀色が意外に浮く。日中、地表近くを走る小型のハナバチやハエ類が星形の花盤に短く止まり、暗い中心部に沿って体を擦ると考えられる。長い茎は風に耐える高さではなく、割れ目の影を越えて花だけを低い飛行線へ差し出すための長さに見える。

2026-06-24 · 水位を読む草

東岸の漁師や牧夫は、遠縁草の距離を水位の記憶として見る。株がまばらに遠くまで出る年ほど、舟を出す水際も家畜を回す湿った草地も遠のくからである。『離れて咲く一つの草』という呼び名は、根の連結を語るだけでなく、湖が退いた距離を人が歩いて測ってきた生活の言葉でもある。

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