
土地が壊れることが、生きる条件になる草があります。
崩れ草は、高さ10cmほどの小さな草。灰緑色の細い葉を地面に低く広げ、淡い黄土色の細い茎の先に、藁色の小さな五弁花をつける。雨が斜面を削るたび、根の先端だけを自分から切り離して下流へ流し、削られた新しい土に根を下ろし直す。だから侵食が止まった安定した斜面では繁殖も止まり、崩れ続ける土地でしか世代をつなげない。土地が壊れることが、この草が生き続ける条件になっている。崩れない場所では、数年で静かに姿を消す。
PLATE I
PLATE II
PLATE III
PLATE IV
PLATE V
PLATE VI
PLATE VII
PLATE VIII
土地が壊れることが、生きる条件になる草があります。
斜面が崩れなくなると、この草も静かに消えていきます。
スペイン北部、バルデナス・レアレスの泥灰岩バッドランド。
雨が灰白色の斜面を削るたび、深い雨裂が刻まれていきます。
崩れ草は、その削られたばかりの裸の泥灰土にだけ現れます。
根の先端だけを自分から切り離し、下流の新しい土に下ろし直します。
降雨の翌朝、ガリー縁の株だけが短く花茎を上げる。花は二、三日で藁色から泥灰色へ褪せ、乾けば萼ごと閉じる。小型の双翅類が訪れるのを見たが、結実は訪花の乏しい株にも残るため、自家和合性を備えるらしい。雨裂の更新に開花を合わせることで、わずかな湿り気を種子形成に使っている。
洗い出されたものは根端そのものではなく、休眠芽を含む短い根茎片に見える。雨水に押されて数十センチから数メートル下流へ移り、泥灰土がまだ締まらない段階で胚軸状の白い節を差し込む。主な更新はこの栄養繁殖で、微小な種子は乾いた谷風に乗り、まれに上流側の裸地へ戻る。
花期を外すと、崩れ草は灰緑の低いロゼットだけとなり、乾いた泥灰土の薄片に紛れる。標本にすれば花弁はすぐ落ち、根茎片も採集時に崩れて失われやすい。古い野帳では、小型のアブラナ科またはナデシコ科草本として片づけられた可能性が高い。安定化した斜面では数年で消えるため、再確認も難しい。