
消えたのではなく、水の下で待っていました。
ひあがり星は、高さ10cmほどの小型植物。明るいオリーブ緑の肉厚な葉を地面すれすれに広げ、淡い赤みを帯びた短い茎の先に、淡い藤色の星形の花をひとつ咲かせる。窪地が満水のあいだ、この植物は地表からまったく見えない。水中で炭素を濃縮して蓄え、池が干上がってひび割れた泥が現れた直後、蓄えを一気に使って数週間で芽を出し、花を咲かせる。消えていたのではなく、水の下で次の乾きに備えていた。乾いた泥が再び水に沈むまでのわずかな期間だけ群落をつくり、また長い眠りに戻る。
PLATE I
PLATE II
PLATE III
PLATE IV
PLATE V
PLATE VI
PLATE VII
PLATE VIII
消えたのではなく、水の下で待っていました。
何年も、地表からはまったく見えません。
スペイン、ドニャーナ国立公園の一時池。
数年に一度しか満ちない窪地が、ようやく干上がります。
ひび割れた泥が現れた直後、ひあがり星は芽を出します。
水中で炭素を蓄え、乾いた瞬間に一気に使って花を咲かせます。
池底が露出して三日目、粘土の多角形亀裂に沿って最初の芽が見えた。花は日中に開くが、葯は開花前から柱頭に触れており、自家受粉で結実を始めるらしい。風の弱い午後には小型のハナバチとハエが一、二度訪れ、群落内の花粉をわずかに運ぶ。短い季節に頼る植物として、他者を待たない仕組みを先に備えている。
ドニャーナの周囲は砂が卓越するが、この窪地の底だけは細粒の粘土と腐植が薄く溜まり、水を逃がしにくい。満水期には暗い底泥に有機物と溶存炭素が集まり、乾燥に転じると収縮して硬い亀裂を作る。ひあがり星の列はその割れ目に従い、砂地ではなく、不透水層が最後まで湿りを残した線をなぞっていた。
満水時に水面を探しても葉は見えない。泥を浅く割ると、前年の株跡の下に短い肥厚茎があり、白い休眠芽と粉質のデンプンを含んでいた。水中では伸びず、薄い膜状の組織で底泥に伏せ、光よりも貯蔵を優先するようだ。再び水が差すころ、地上部は崩れるが、種子と休眠芽は泥中に残り、次の乾きを待つ。