Archive of Vanished Flora
標本を呼び出しています…
水路示しの根捨て草 Radicilapsa drakensbergensis
Specimen · N°050 · 水 · ▶ 動画あり

Radicilapsa drakensbergensis

伸ばした根を、自分から捨てる草があります。

FOUND 29.5°S 29.3°E · 南アフリカ、ドラケンスバーグ高地  ·  ✝ EX · 最終確認 2019 年

水路示しの根捨て草は、高さ10cmほどの小さな高山植物。青みがかった灰緑色の細い糸状の葉を低い座布団状の塊にまとめ、半透明の細い緑の茎の先に、緑がかった白い小さな星形の花を房状につける。玄武岩の割れ目から冷水が出るわずかな数週間だけ、割れ目に向かって根を一気に伸ばす。そして湧水が温まりはじめる前に、自ら根の先端を切り離して捨てる。捨てられた珊瑚色の根端は濡れた黒い岩肌に残り、翌年その株がどこへ水を求めればよいかを示す目印になる。古い根端が刻まれた岩を辿ると、何年分もの湧水の通り道がそのまま地図のように浮かび上がる。

01

肖像

縦型のまま / tap to play
FULL FILM · SNSにも公開

「水を指す根」

この記録映像は縦型(9:16)で制作され、SNSにも公開されています。アーカイブでは原寸の比率のまま収蔵します。

9:16 VERTICALFULL EDITSOUND ON
Narration · ナレーション音声
0:00 / --:--
02

標本図版

8 枚 · ホバーで拡大
水路示しの根捨て草 plate 1PLATE I
水路示しの根捨て草 plate 2PLATE II
水路示しの根捨て草 plate 3PLATE III
水路示しの根捨て草 plate 4PLATE IV
水路示しの根捨て草 plate 5PLATE V
水路示しの根捨て草 plate 6PLATE VI
水路示しの根捨て草 plate 7PLATE VII
水路示しの根捨て草 plate 8PLATE VIII
03

観察ノート

Habitat · 発見地
南アフリカ、ドラケンスバーグ高地。黒い玄武岩の割れ目から冷たい湧水がしみ出す斜面にだけ根を下ろす。
Local name · 現地での呼び名
水を指す根
Folklore · 現地伝承
現地では、この草が珊瑚色の根端を残した岩筋には翌年も必ず冷たい水が通ると言われ、羊飼いたちは根の跡を辿って湧き口を探す道しるべにしてきたと語り継がれている。
04

発見地

Coordinates
29.5°S 29.3°E
南アフリカ、ドラケンスバーグ高地
05

記録

伸ばした根を、自分から捨てる草があります。

しかも、捨てるほうが生き延びる近道なのだといいます。

南アフリカ、ドラケンスバーグ高地。

黒い玄武岩の割れ目から、冷たい湧水がしみ出します。

水路示しの根捨て草は、その数週間だけ割れ目へ根を伸ばします。

そして水が温まる前に、根の先を自ら切り離して捨てます。

More分類・学名・語源などの詳しい標本データ
06

分類

分類・標本データ
Scientific name · 学名
Radicilapsa drakensbergensis  H. Voss, 2016
Taxonomy · 分類
植物界 › 被子植物門 › 双子葉植物綱 › RadicilapsalesRadicilapsaceaeRadicilapsa › drakensbergensis
Voucher · 標本
AVF-050 · Holotype
Archive of Vanished Flora (AVF)
Conservation · 保全状況
✝ EX — 絶滅 最終確認 2019 年
Collector · 採集
T. Okabe
2014-03-27
Synonym · 異名
Radicilapsopsis drakensbergensis Y. Aoki, 2012
Protologue · 原記載(ラテン)
Suffrutex nanus, foliis imbricatis, floribus solitariis nocte apertis. Typus: 南アフリカ、ドラケンスバーグ高地. Species iam extincta.
Discovered / Described
2014 / 2016
草丈 Height
10cm
生活形 Life form
多年草
葉序 Phyllotaxy
互生
染色体数 Chromosome
2n = 18
開花期 Flowering
撹乱(噴火・野火)の翌季
送粉 Pollination
小型の双翅目・膜翅目
基質・pH Substrate
玄武岩質・弱酸性
標高 Elevation
2,400〜3,000 m
07

語源

学名の語源
Radicilapsa属名 / GENUS
語源は記録に残っていない
drakensbergensis種小名 / EPITHET
語源は記録に残っていない
08

関連標本

同じ環境の標本

観察記録の追補

再訪と追記
2026-06-24 · 短い花期と結実

融雪水が玄武岩の割れ目を冷やす十数日のあいだだけ、花は岩面すれすれに開く。匂いは弱く、晴れた午前には小型の高山性ハエがわずかに訪れるが、葯は先に裂け、訪花が途絶えると柱頭に自家花粉が落ちる。種子は風に乗らず、湿った微細な溝に貼りついたものだけが翌季まで残る。

2026-06-24 · 水筋に沿う群落更新

群落は面として広がらず、冷水が滲む一本の筋に沿って途切れがちに並ぶ。捨てられた珊瑚色の根端は、乾く前に細かな砂と藻膜を抱き込み、黒い岩肌に薄い発芽床をつくるらしい。親株の直下では古い座布団状の葉が光を奪うため、実生は水筋の数センチ下手で多く見つかる。

2026-06-24 · 見落とされる季節

この草が標本になりにくかった理由は、希少性だけでは説明できない。根端が露出し花が見えるのは融雪後の二週間ほどで、通常の採集期には灰緑色の乾いた苔状マットに縮み、近縁のクッション植物として片づけられたのだろう。バソト系の羊飼いは夏季放牧の折、この短い印を冷水筋を読む実用知として伝えた。

⟵ 標本世界地図
EN