
湧き水に触れた花だけが、石に変わります。
石化花は、高さ10〜16cmの多年草。厚い緑灰色の葉と、淡い黄白色の小さな花を持つ。石灰分を含む湧き水が絶えず触れ、株の下部から少しずつ白い鉱物の被膜に覆われ、古い株はやがて花の形のまま石のように固まる。
PLATE I
PLATE II
PLATE III
PLATE IV
PLATE V
PLATE VI
PLATE VII
PLATE VIII
湧き水に触れた花だけが、石に変わります。
その瞬間を見た人は、ほとんどいません。
トルコ、パムッカレの白い石灰華段丘。
石灰分を含む湧き水が流れる水際に、石化花は根を張ります。
厚い緑灰色の葉が、水際の縁に低く広がります。
その中心に、淡い黄白色の小さな花が開きます。
五月下旬、湯の流れがいくらか細る朝にだけ、淡黄白色の花が葉の間から見えた。花はほとんど開ききらず、葯は柱頭に近く、風や昆虫を待つ構造には見えない。数日後には花被が縮み、基部に小さな蒴果が残る。石灰華に足を取られる水際で、確実なのは他者を待たない自家受粉なのだろう。
熟した蒴果を軽く押すと、粉のように細かな褐色の種子がこぼれた。乾けば風に乗るほど軽いが、実際には葉の下を流れる薄い水膜にすぐ捕まり、段丘の縁を数十センチほど滑って止まる。幼株は古株のすぐ下流側に偏る。遠くへ広がらないことが、この植物を水路の縁に縫い止めている。
白く固まった古株は、少し離れると植物ではなく石灰華の小突起にしか見えない。緑灰色の生葉も水路縁の藻類や湿った沈着物に紛れる。古い採集票には、一度だけ「石灰華上の蘚苔様付着物」と読める記述があるが、標本は残らない。現生株の多くは立入を禁じられた湧水路の細い縁に点在し、観光路からは白い地肌に吸い込まれる。