
葉を減らすほど、まるで速く育つ植物です。
無葉草は、高さ20cmほどの細い植物。緑色の細い茎が数本まっすぐ立ち上がり、葉はほとんど持たない。茎の先に淡い黄緑色の小さな星形の花をひとつつける。栄養の乏しい白砂では、葉を広げるほど維持に栄養を奪われ、かえって成長が遅くなる。そこで無葉草は光合成のはたらきを茎のごく一部の細胞へ密集させ、葉をほとんど捨てた姿で炭素を得る。隣り合う株ほど茎の本数が少なく、葉が少ない株ほど早く育つという逆転が、この白砂の上では起きている。
本編 準備中
PLATE I
PLATE II
PLATE III
PLATE IV
PLATE V
PLATE VI
PLATE VII
PLATE VIII
葉を減らすほど、まるで速く育つ植物です。
ふつうは、逆のはずです。
ガイアナ、エセキボ地方の白砂林。
栄養がほとんど抜け落ちた、真っ白な砂の上。
無葉草は、葉をほとんど持ちません。
光合成のはたらきを、細い茎のわずかな細胞へ密集させています。
雨季の最初の強い降雨から三日ほどで、白砂の浅い湿りだけを頼りに茎が伸び、花は二晩から三晩で閉じる。乾季に残るのは白く退色した硬い茎で、砂面の破片と区別しにくい。古い採集札に小型のカヤツリグサ類として束ねられた標本があるなら、花を失ったこの状態であったはずだ。
淡い黄緑の星形花は目立つ誘引器官ではなく、夕方にだけ葯をゆるめ、弱い香りを出す。小型の夜行性蛾が訪れるが、結実は訪花が乏しい年にも起こるため、風で揺れた花内の自家受粉が主であろう。熟した果実は裂けず、雨滴に打たれて数十センチだけ転がる。この短い散布距離が、隣り合う株ほど細り、茎数を減らす群落を作る。
無葉草のある砂地では、落葉層が薄く、根を入れても黒い腐植に当たらない。近くの人々が「鳥も巣を作らない」と言うのは誇張ではなく、果実や虫の量が少ない開け地を避ける経験則に近い。緑の筆が立つ白砂は、焼畑を開いても作物が保たず、果樹を植えても乾季に落ちる土地として読まれたのだろう。