
すぐ隣の岩へ移すと、もう育ちません。
読み分け低木は、高さ20cmほどのクッション状の小低木。青灰色の小さな革質の葉を密に重ね、葉の縁は銅色に染まる。短い枝先に、蝋のような淡い黄緑色の小花を固く寄せて咲かせる。赤褐色の蛇紋岩がむき出しになった露頭に根を張り、岩ごとに違うニッケルやマグネシウムの比率を根で読み分け、それぞれ別の根圏微生物を呼び寄せて育つ。数メートル離れた隣の露頭へ株を移しても、そこでは根づかない。だから群落は岩の境目で途切れ、分布は細かな島のように点在する。森全体では珍しくないのに、ひとつの露頭の群れは、その岩の上だけのものだ。
本編 準備中
PLATE I
PLATE II
PLATE III
PLATE IV
PLATE V
PLATE VI
PLATE VII
PLATE VIII
すぐ隣の岩へ移すと、もう育ちません。
同じ森の、同じ見た目の岩なのに。
キューバ東部、モア近郊の蛇紋岩の低木林。
読み分け低木は、金属を多く含む薄い土の露頭にだけ生えます。
青灰色の葉を密に重ね、縁は銅色に染まります。
この茂みは、岩ごとに違う金属の比率を根で読み分けているのです。
三月末の小雨のあとだけ、枝先の淡黄緑色が一斉にほどける。五日も経つと花被は蝋片のように縮み、青灰色の葉に紛れて、近縁の蛇紋岩性低木とほとんど区別がつかない。採集票にはしばしば「乾いた矮性低木」とだけあり、根を失った押し葉ではこの植物の肝心な性質が消えてしまう。
結実は多いが、遠くへ運ばれる種子は少ない。熟した果実は乾くと裂け、黒い細粒の種子を同じ露頭の割れ目へ落とす。強い驟雨のあと、種子は赤褐色の岩肌を数十センチだけ流れ、微生物膜の残る窪みに集まる。発芽そのものは容易らしいが、適合しない岩では第一葉の展開前に根端が褐変して止まる。
モア近郊では、株のある岩を mata que lee la piedra と呼ぶ者があり、畑を広げる前にその有無を見るという。読み分け低木の群れが急に途切れる線は、土の薄さだけでなく、作物の根が焼けるように弱る場所を示していた。鉱石を掘る者には目立たぬ低木でも、畑と道を決める者には、蛇紋岩の違いを読ませる実用の印だった。