Archive of Vanished Flora
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梢戻り草 Umbravena teraiensis
Specimen · N°045 · 森

Umbravena teraiensis

火が通った焼け跡では、なぜか芽を出しません。

FOUND 27.0°N 84.0°E · ネパール南部テライ、サラソウジュ(サラ)林  ·  ✝ EX · 最終確認 2023 年

梢戻り草は、高さ20cmほどの林床植物。深緑のやや厚い葉を低く広げ、銅色の細い茎の先に、淡い藤色の小さな筒状の花をうつむき気味につける。多くの火災依存植物が焼け跡の強い光で一斉に芽吹くのに対し、この草は逆で、明るい焼け跡を避ける。火が通ったサラ林がゆっくり回復し、ふたたび樹冠が閉じて、揺れる木漏れ日が斑になって差す薄暗い林床に戻った時、はじめて発芽して育ち始める。森が世代を入れ替え終え、変動する光が戻った印として、静かに咲く。

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肖像

標本写真 / archival still
梢戻り草
STILL · 標本写真

「森が戻った合図」

この標本に動く記録は残されていません。静止した一枚に、その姿をとどめています。

ARCHIVAL STILLPLATESILENT
Narration · ナレーション音声
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標本図版

8 枚 · クリックで拡大
梢戻り草 plate 1PLATE I
梢戻り草 plate 2PLATE II
梢戻り草 plate 3PLATE III
梢戻り草 plate 4PLATE IV
梢戻り草 plate 5PLATE V
梢戻り草 plate 6PLATE VI
梢戻り草 plate 7PLATE VII
梢戻り草 plate 8PLATE VIII
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観察ノート

Habitat · 発見地
ネパール南部テライ、サラソウジュ(サラ)林。森林火災で明るく開けた焼け跡では芽を出さず、再び樹冠が閉じて木漏れ日が揺らぐ薄暗い林床に戻った場所にだけ現れる。
Local name · 現地での呼び名
森が戻った合図
Folklore · 現地伝承
現地では、梢戻り草が咲いた林は火事の傷が癒え、ふたたび深い森に戻った証とされ、その木陰では再び薪を採ってよいと古くから語り継がれてきた。
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発見地

Coordinates
27.0°N 84.0°E
ネパール南部テライ、サラソウジュ(サラ)林
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記録

火が通った焼け跡では、なぜか芽を出しません。

森がふたたび閉じるのを、じっと待ちます。

ネパール南部テライ、サラソウジュの林。

多くの植物が焼け跡の明るさで芽吹くのに、この草は逆です。

回復した樹冠が閉じ、木漏れ日が斑に揺れる薄暗い林床に戻った時、

はじめて発芽し、淡い藤色の花をうつむかせます。

More分類・学名・語源などの詳しい標本データ
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分類

分類・標本データ
Scientific name · 学名
Umbravena teraiensis  K. Brandt, 2016
Taxonomy · 分類
植物界 › 被子植物門 › 双子葉植物綱 › UmbravenalesUmbravenaceaeUmbravena › teraiensis
Voucher · 標本
AVF-045 · Holotype
Archive of Vanished Flora (AVF)
Conservation · 保全状況
✝ EX — 絶滅 最終確認 2023 年
Collector · 採集
Y. Aoki
2015-10-19
Synonym · 異名
Umbravenopsis teraiensis C. Iwabuchi, 2013
Protologue · 原記載(ラテン)
Planta humilis, caule brevissimo, petalis albidis nitentibus, in loco aperto crescens. Typus: ネパール南部テライ、サラソウジュ(サラ)林. Species iam extincta.
Discovered / Described
2015 / 2016
草丈 Height
20cm
生活形 Life form
多年草
葉序 Phyllotaxy
互生
染色体数 Chromosome
2n = 32
開花期 Flowering
短い開花期(数日)
送粉 Pollination
小型の双翅目・膜翅目
基質・pH Substrate
礫質・ほぼ中性
標高 Elevation
200〜1,200 m
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語源

学名の語源
Umbravena属名 / GENUS
umbra
teraiensis種小名 / EPITHET
語源は記録に残っていない
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関連標本

同じ環境の標本

観察記録の追補

再訪と追記
2026-06-24 · 沖積段丘の床

本種を見た区画はいずれも新しい氾濫原ではなく、砂礫を含む古い沖積段丘のサラ林であった。火後の灰は二度の雨で速やかに抜け、裸土のまま乾く。その後、サラの落葉が再び薄い酸性腐植を作り、指で払うと黒褐色の層が礫の間に残る頃、はじめて実生が現れる。水分よりも、灰分の消失と腐植の復帰を待つ草と見るべきだろう。

2026-06-24 · 小群落と夜の花

梢戻り草は一面を覆わず、倒木の影やサラ若木の根元に三株から十数株の小斑を作る。掘り取り跡では短い根茎が横に這い、翌年の芽を数節だけ離して置いていた。花は日中ほとんど香らないが、薄暮に筒口がわずかに開き、淡い甘臭を出す。訪花者は未確認ながら、小型の薄暮性蛾に合う構造で、映像に写らないほど短い接触で済むのだろう。

2026-06-24 · 記録に残らぬ理由

この草の不在は、希少性だけでは説明しにくい。開花は樹冠が閉じてから数年に限られ、花期もモンスーン直前の十日ほどで終わる。花色は押し葉にすると藤色を失い、筒部も縮れて、サラ林の普通な幼植物やキツネノマゴ科様の草本として片づけられやすい。焼け跡を探す採集者は早すぎ、成熟林を歩く者は遅すぎるのである。

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