Archive of Vanished Flora
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傷選びの星 Selectiva obsidiana
Specimen · N°041 · 岩

Selectiva obsidiana

最も焦げた芽だけが、翌年まで残ります。

FOUND 40.2°N 44.8°E · アルメニア、ゲガム山地の黒曜石礫原  ·  ✝ EX · 最終確認 1967 年

傷選びの星は、高さ10cmほどの低いクッション状の植物。黒みがかった青緑の革質の葉を密なロゼットに広げ、短く枝分かれした茎の先に、淡い琥珀色の小さな星形の花をつける。一株のうち、最も日が当たる側は紫外線で焼け、葉が銅色に変色して傷んでいく。多くの植物が損傷を避けるのに、この植物は逆に、最も傷ついた側の芽だけを翌年の主茎に選ぶ。傷の大きさは、その芽がどれだけ強くDNAを修復できたかの証になる。修復しきった芽だけが残り、礫原の上で年ごとに位置をずらしながら、淡い星形の花を咲かせ続ける。

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肖像

標本写真 / archival still
傷選びの星
STILL · 標本写真

「焦げ芽の星」

この標本に動く記録は残されていません。静止した一枚に、その姿をとどめています。

ARCHIVAL STILLPLATESILENT
Narration · ナレーション音声
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標本図版

8 枚 · クリックで拡大
傷選びの星 plate 1PLATE I
傷選びの星 plate 2PLATE II
傷選びの星 plate 3PLATE III
傷選びの星 plate 4PLATE IV
傷選びの星 plate 5PLATE V
傷選びの星 plate 6PLATE VI
傷選びの星 plate 7PLATE VII
傷選びの星 plate 8PLATE VIII
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観察ノート

Habitat · 発見地
アルメニア、ゲガム山地の黒曜石礫原。黒いガラス質の礫が日射で熱せられ、強い紫外線を照り返す乾いた高地斜面の、礫のすき間にだけ根を下ろす。
Local name · 現地での呼び名
焦げ芽の星
Folklore · 現地伝承
現地では、傷選びの星のいちばん焦げた芽からこそ翌年の花が伸びると知られ、最も傷ついたものが残るという厳しい選びの象徴として語り継がれてきた。
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発見地

Coordinates
40.2°N 44.8°E
アルメニア、ゲガム山地の黒曜石礫原
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記録

最も焦げた芽だけが、翌年まで残ります。

傷を避けるのではなく、傷の大きさで選んでいるのです。

アルメニア、ゲガム山地の黒曜石礫原。

黒いガラスの礫が日射を吸い、強い紫外線を照り返します。

傷選びの星は、礫のすき間にだけ根を下ろします。

最も日が当たる側は焼け、葉が銅色に傷んでいきます。

More分類・学名・語源などの詳しい標本データ
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分類

分類・標本データ
Scientific name · 学名
Selectiva obsidiana  A. Reinholt, 1964
Taxonomy · 分類
植物界 › 被子植物門 › 双子葉植物綱 › SelectivalesSelectivaceaeSelectiva › obsidiana
Voucher · 標本
AVF-041 · Holotype
Archive of Vanished Flora (AVF)
Conservation · 保全状況
✝ EX — 絶滅 最終確認 1967 年
Collector · 採集
Y. Aoki
1963-06-18
Synonym · 異名
Selectivopsis obsidiana L. Fontaine, 1961
Protologue · 原記載(ラテン)
Planta humilis, caule brevissimo, petalis albidis nitentibus, in loco aperto crescens. Typus: アルメニア、ゲガム山地の黒曜石礫原. Species iam extincta.
Discovered / Described
1963 / 1964
草丈 Height
10cm
生活形 Life form
ロゼット状の多年草
葉序 Phyllotaxy
根生葉(ロゼット)
染色体数 Chromosome
2n = 24
開花期 Flowering
短い開花期(数日)
送粉 Pollination
小型の双翅目・膜翅目
基質・pH Substrate
礫質・ほぼ中性
標高 Elevation
200〜1,200 m
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語源

学名の語源
Selectiva属名 / GENUS
語源は記録に残っていない
obsidiana種小名 / EPITHET
語源は記録に残っていない
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関連標本

同じ環境の標本

観察記録の追補

再訪と追記
2026-06-24 · 開花の短さ

融雪の縁が礫原を横切った直後、花は二、三日だけ開いた。午後には黒曜石礫の照り返しで花弁がしぼみ、乾季の標本では銅色に焼けたロゼットしか残らない。既知の高山性クッション植物の老化株として片づけられた記録が多いのは、このためと思われる。

2026-06-24 · 送粉と結実

花には早朝、小型の高山性ハナアブが短く訪れたが、訪花数は株ごとに安定しない。葯と柱頭の距離が狭く、風で花冠が揺れるだけでも花粉が落ちるため、結実の主力は自家和合性にあるらしい。種子は軽く飛ばず、礫のすき間にこぼれたものだけが翌春の湿りを得る。

2026-06-24 · 礫原の記憶

夏の放牧路から外れた黒曜石礫原では、踏み跡がほとんど残らない。羊飼いは刃や火打石に用いた黒い石の上で、焦げた芽だけが翌年伸びることを覚えていたという。『焦げ芽の星』の名は、花よりも焼け跡を読む土地の目から生まれた呼称である。

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